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2007年12月 5日 (水)

『7時のニュース/きよしこの夜』サイモン&ガーファンクル

7サイモン&ガーファンクルが歌う「きよしこの夜」は、バックグラウンドから徐々に聞こえてくるウォルター・クロンカイトのニュースを読み上げる声が美しい。

12月になるとキリスト教徒でもないのに、クリスマスが近付いてくるのを楽しみにするようになる。その大きな理由は年に一度、この1か月だけはクリスマス関連の音楽をたっぷりと味わうことができるからだ。

「きよしこの夜」はギターを使って作曲されたためだろう、ギターでの弾き語りに適した曲である。ギター好きのせいもあり個人的に好きな歌だ。クリスマスに関連した他の曲同様、この歌も多くのアーティストが取り上げ演奏している。その中で、サイモン&ガーファンクルの作品は、米国の有名なニュース・アンカーマン、ウォルター・クロンカイトが読むニュースの音声を重ねた異色の一曲である。元々は彼らの3枚目のアルバム『パスリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収められたもので、同アルバムは196611月に米国で発売された。

ウォルター・クロンカイトは米国3大ネットワークの一つCBSのニュース番組で20年近くにわたりアンカーマンを務めた著名な放送ジャーナリストである。英語を勉強していた頃、私は自分のアーティキュレーションが悪いことに気づき、クロンカイトの声を学校の教材から録音し、繰り返し聴き真似たことがあった。文章の勉強では文体の模写が重要と言われるが、これは差し詰め“発音の文体模写”といったところか。お陰で短時日で発音が良くなった。その意味でクロンカイトは私の先生の一人でもある。

ポール・サイモンとアート・ガーファンクルは、ピアノが奏でるアルペジオにのって“Silent night, Holy night, All is calm ...”と唄い出す。やがて、隣りの家のラジオからのように、クロンカイトが読むニュースが“... President Johnson originally proposed an outright ban ...”と聞こえてくる。耳を澄まして聴くと、「ジョンソン大統領」のほかに、「レニー・ブルース」、「マーティン・ルーサー・キング牧師」、「ニクソン前副大統領」(ニクソンが大統領になるのは1969年のこと)などの名前が上がり、殺人事件やベトナム戦争に関するニュースが読み上げられる。

二人の柔らかく美しいハーモニーと歯切れの良いクロンカイトの声が対位法のように響き合い、唄われる“Holy night”、“heavenly peace”といった甘美な言葉とニュース中の“murderer”、“grand jury”、“indictment”といった殺伐として語感が生み出すコントラストは、クリスマスの飾りで華やかな街と、それを覆う夜空と、その下で起きている数々の事件、死、戦争…という“現実”を抉り出す。まさに音が創り上げた辛らつなコラージュである。

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