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2007年11月 6日 (火)

『抜萃のつづり』:弛まず75年

Photo_2 株式会社クマヒラという会社がある。元々は家庭用の小型金庫から銀行の大金庫までも手がける金庫メーカーだったが、現在では「セキュリティシステムのトータル・ソリューション企業」ということで、金庫のみならず生体認証装置やセンサーなども製造販売するセキュリティ機器の総合メーカーとなっている。

知合いにそのクマヒラに勤めている人がいて、以前『抜萃のつづり』という小冊子(A5版、132ページ)をいただいたことがある。

『抜萃のつづり』は同社の創業者である熊平源蔵という人が「日頃の御好意に対」する「感謝の意」(「創刊のことば」から引用)として1931年(昭和6年)に初めて作成したもので、以来、戦中戦後の一時期を除き、年1回のペースで発行し続け、今年第66号を発行するに至った。第66号は合計45万部を印刷し、国内・国外8万ヶ所以上に配布したという。

収録されているのは主に前年に各種雑誌、新聞などに掲載されたエッセイや短文で、執筆者の顔ぶれは実に多彩。66号の目次には、松永伍一、舞の海秀平、高橋源一郎、逢坂剛、コシノヒロコといった名がある。

内容も「修養」「自然と文化」「宗教」などの区分の下、含蓄のある話や感動的エピソード、思わず頷くような挿話といった具合で、これだけの文章を選び出すというのもなかなか大変な作業だろうと思われる。大変といえば、そうした文章の執筆者、発行者に転載の許可を得るというのも時間のかかる作業だろう。

ただ、そうした交渉に際しては、創刊から75年という歴史の重みが大きく物を言うだろうというのも十分推察されるところだ。また無料で配布していることも、転載を求められる側としては無視できない事実だろうし、却って無料であるということで承諾しやすいということもあるかもしれない。そのせいか、各界の著名人だけでなく、曽野綾子や黒井千次、重松清といったプロの作家たちも掲載に応じている。

昨年の第65号には、阪神淡路大震災から10年ということで20051月の讀賣新聞に新井満氏が寄稿した『千の風と千の花』という文が載っていた。タイトルから察せられる通り、その後歌になってヒットした『千の風になって』の詞が、神戸市にある“人と防災未来センター・ひと未来館”の展示会で紹介されたという内容であった。65号の巻頭に掲げられた一文である。

今年の第66号では、作家であり僧侶である玄侑宗久氏の『ウドンの恐怖、ウドンの悦び』が掉尾に彩りを添えたが、氏の『現代語訳般若心経』を読んでいる最中であったためとウドンという題材のせいか、旨いダシのようにじんわりと沁みてくる面白さで、そこに文のうまさも加わり思わずウドンが食いたくなった

『抜萃のつづり』は毎年1月の発行で、株式会社クマヒラに申し込めば、個人でも送ってくれるとのことである。

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コメント

はじめまして。
ご紹介いただきました『抜萃のつづり』ですが、私も読んでみたいと思い、クマヒラに電話をいたしました。不安の中でのことでしたが、親切に対応してくださり、このご縁に感謝いたしております。
ありがとうございました。

投稿: goku | 2007年11月 7日 (水) 11時37分

gokuさん

私も確認したいことがあり、クマヒラに電話をしたところ、大変丁寧に対応していただきました。
また記事には書きませんでしたが、『抜萃のつづり』は75年前の創刊号からすべて保存してあるそうです。「真面目」という、今ではあまり企業に関しては使われない言葉を連想しました。

投稿: Jack the Rabbit | 2007年11月 7日 (水) 22時47分

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