« 羽生が勝つ | トップページ | 将棋: Current Standings/12月-2 »

2007年12月22日 (土)

「情報の共有」

私が翻訳に関わるようになった1980年代後半、日本語に「情報を共有する」という表現はなかった。

英語では「To share (the) information with someone」。今ではごく当たり前の言い方として日常でも使われ、テレビや新聞、雑誌などでも認知され使用されている。

ところが20年ほど前、私がこの英語表現に初めて遭遇した頃は、「情報を交換する」とは言ったが「情報を共有する」とは言わなかった。しかし原文(英語)には確かに「share」と書かれている。たまたま訳文(日本語)の質に非常に敏感なクライアントだったこともあり、私は「共有」は使わず「交換」とした。その意味するところが結果的には類似しているとの判断である。しかしその後は、特に他のクライアントに関しては、徐々に「共有」を使うようになっていった。

またこれとは逆のケースもあった。日本語から英語への翻訳で、「情報を交換する絶好の場になるだろう」という表現を「It will be a good opportunity to exchange information」としたところ、チェック担当の米国人に「It will be a good opportunity to share information」と修正された。彼に言わせると、「to exchange information」という表現は英語では奇異に聞こえるとのことだった。

日本語の「交換」が言外に、それぞれが持つ情報を伝え合うだけのその場限りの行為という意味合いが感じられるのに対し、英語の「share」には、情報を伝え合った後もコミュニケーションを継続して行こうという「関係の持続」に対する意図が見られるという違いがある。

「情報の共有」という表現は日本語に定着しただけでなく、昨今のビジネスの世界では、「交換」よりも圧倒的に使われることが多い。この言葉が持つ、「関係の持続」感が広く受け入れられているためだろう。

|

« 羽生が勝つ | トップページ | 将棋: Current Standings/12月-2 »

翻訳」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/17442814

この記事へのトラックバック一覧です: 「情報の共有」:

« 羽生が勝つ | トップページ | 将棋: Current Standings/12月-2 »