« 将棋:第66期名人戦第3局インタビュー | トップページ | 将棋:第2回大和証券杯最強戦 »

2008年5月11日 (日)

将棋:「名局」は大切に

もう一昨日になってしまったが、名人戦第3局の逆転はネット中継で見ていても心臓が踊るような興奮を覚えた。やはりリアルタイム(完全ではないが、ほぼ同時と言っていいだろう)での棋譜の再現というのは他の方法では味わえない迫力・醍醐味がある。今後、この方向で将棋対局の公開方法がさらに進化してゆくことを期待したい。

そのネット中継を見ていて今回も気になったのが応援掲示板への投稿で、取材記者も含め多くの人が、目の前で繰り広げられた逆転劇を「世紀の」とか「歴史に残る」、「奇跡の」といった惹句めいた言葉で形容していたこと。

渡辺明竜王が指摘している通り、逆転ということで言えばあの程度の逆転はプロでも珍しいことではない。こういう形容詞は真にその言葉に相応しい名勝負のためにとっておくべきだろう。ただし、今回の逆転劇は(これも渡辺竜王が的確に述べている通り)、森内、羽生と役者が揃った名人戦という大舞台で起こったという点では特筆に価する。また「熱戦」であり、「激闘」であったことも確かで、われわれの記憶に長く留まることは間違いない。

このほかにもう一つ「名局」という言葉も頻繁に使われるが、この言葉にいたっては軽々に使うべきでないと思っている。ましてわれわれアマがプロの将棋を「名局」かどうか評価することは不可能である。プロ高段者が、両対局者の読み筋を丁寧にたどり、双方に見損じ、見落としなどがないこと、互いに最高度の技術を駆使して戦ったことなどを確認した上で、はじめて「名局」の名を与えることができる。

今回の名人戦第3局は羽生にとって(それは羽生ファンにとっても)会心の逆転劇ではあったが、序盤で形勢が一方に偏り、また終盤先手に大きな見落としがあり、と決して名局といえる内容ではなかった。

「名局」という言葉、こと将棋に関してはこれに優る褒め言葉はないのであり、それを貶めるような軽々しい使い方は慎もうではないか。

|

« 将棋:第66期名人戦第3局インタビュー | トップページ | 将棋:第2回大和証券杯最強戦 »

将棋」カテゴリの記事

コメント

Jack様、上記の”「名局」を大切に”の記事の内容、同感です。

今回の逆転劇は確かに、あのような大舞台で、役者も揃ってという点では珍しいことかもしれませんが、「信じられない大逆転」という意味では、前期65期名人戦第6局の大逆転に及ぶものではないと思います。

おそらくは、現場の雰囲気のようなものがあって、森内必勝と誰もが信じて疑わない中で、羽生マジックを思わせる逆転が起こったということに、解説を担当した棋士も、マスコミも飲まれてしまったということではないでしょうか。
対局者のみならず、周りの関係者をも羽生マジックにかかってしまったのではないかと思います。

そのことそのものは、羽生二冠のすごさだと思いますが、そのことと、棋譜の内容が「世紀の大逆転」や「名局」という形容にふさわしいかは、別の問題だと思います。

投稿: 拓庵 | 2008年5月11日 (日) 12時14分

拓庵さん
仰る通り、その場の“熱気”のせいで思わず口走ってしまう、みたいなことはあると思います。
でも、「50年に一度」とか「100年に一度」と言われると、名人戦の歴史がほぼカバーされてしまい、やっぱりちょっと困ります。
私が(ネット中継などはなかったので)“ほぼリアルタイム”で経験した逆転で最大のものは中原-大内の名人戦第7局だと思います。必勝の1局が持将棋になり、結局大内さんは手中に収めかけた名人位を逃すことになったのですから、インパクトは今回の比ではありませんでした。
それにしても今期の名人戦には羽生さんの“執念”を感じます。

投稿: Jack | 2008年5月11日 (日) 14時02分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/41165303

この記事へのトラックバック一覧です: 将棋:「名局」は大切に:

« 将棋:第66期名人戦第3局インタビュー | トップページ | 将棋:第2回大和証券杯最強戦 »