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2008年7月 7日 (月)

羽生が影響を受けた本:『将棋に勝つ考え方』

『将棋世界』08年8月号の「十九世名人誕生記念・特別対談 羽生が作った現代将棋の概念」という対談で、森下卓九段が、羽生善治名人が影響を受けた将棋本について語っていた。

あの羽生名人に影響を与えた本とは、『将棋に勝つ考え方』(谷川浩司著、昭和57年池田書店発行)である。

『将棋に勝つ考え方』はそれまで漠然と語られてきた「大局観」について、きわめて具体的に述べた初めての本であり、当時はかなり話題になったと記憶している。

その頃の将棋関係の本を読むと、ほとんどの場合、プロとアマの力が違う理由として「大局観の正確さ」が挙げられていた。曰く、「大山名人の大局観は正確だ」、「プロは形勢の良し悪しを大局観で判断する」。しかし、素人にはその「大局観」というのが分からない。

それを谷川七段(当時)は、

■序盤においては
①駒の損得
②駒の働き
③手番

■中盤においては
①駒の損得/駒の働き/手番

■終盤においては
①手番
②駒の働き
③駒の損得

の順で重要であるとし、このうち「駒の損得」に関しては、各駒に次のような点数を付け、対戦相手の駒全部と自分の駒全部を事あるごとに比較することを奨めている。

  1. 王将 ―
  2. 飛車 15点
  3. 竜王 17点
  4. 角行 13点
  5. 竜馬 15点
  6. 金将 9点
  7. 銀将 8点
  8. 成銀 9点
  9. 桂馬 6点
  10. 成桂 10点
  11. 香車 5点
  12. 成香 10点
  13. 歩兵 1点
  14. と金 12点

王将に点がないのは、王は取られた瞬間にゲームオーバーとなるため、点数に換算できないということである。成駒の点数が、歩>香>桂>銀の順に低くなってゆくのは、相手に取られたときに、相手が得られる利が少ない駒ほど価値があるという発想である。上記から、最初に保有する駒19枚の点数合計は93点となる。

駒の働きとは、たとえば守備的な駒は自陣にある場合に有効に働いているのであり、攻撃的な駒は敵陣にあって、はじめて働くものであるといったことで、また指す人間の性格や駒の好みなども、“働き”を左右する要素として考慮するべきであるとしている。そのほかにも、駒の損得と働きのバランスなど詳しい説明が続く。

この本は谷川の最初の著書で、谷川20歳のときに発行された。当時羽生は11歳。奨励会入会直前の頃である。

ところで私も、この本をdouble crownさんがブログで募った『将棋オールタイムベストテン』という企画に応じる形で書いた記事『将棋書ベスト10』で第9位に挙げている。自分が選んだ10冊中に、あの羽生善治も影響を受けた本があったというのは将棋ファンとして嬉しい限りである。

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