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2008年10月20日 (月)

将棋:第21期竜王戦第1局 羽生が先勝

第21期竜王戦第1局は、92手で後手挑戦者羽生善治名人が渡辺明竜王を降し、幸先のよいスタートを切った。

一昨日(08年10月18日)のエントリーで、先手渡辺竜王が43手目▲9八香と穴熊囲いを目指したところまで書いた(図1)。

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ここから6手進んで、▲2四歩で指しかけとなり、50手目を羽生が封じた。封じ手を羽生に渡したことを知って私は渡辺らしくないなと思った。雑誌『将棋世界』に連載され、先ごろ単行本化された『イメージと読みの将棋観』で、封じ手に関する質問に渡辺は「2日制においてはかなり重要なポイント」であると答えている。

封じ手の局面、普通に考えて(ひねって考えてもか)、▲2四歩に対する応手は△同歩の一手だろう。だとすると、▲2四歩を封じ手としていれば、渡辺は49手目▲2四歩と50手目△同歩という局面を、相手よりも2手、時間にすれば一晩先行して考えられることになる。これは大きなアドバンテージだろう。

ただ一つ、渡辺が49手目▲2四歩にどれくらいの時間を使ったかが気になるところで、もし封じ手時刻までそのまま考え続けていたら、持ち時間に大きな開きが生じていたということであれば、渡辺の指し手も納得できる。ネット中継の問題の一つは、一手、一手の消費時間が分からないことであるが、今後その点も改善して行ってほしいものである。

ネット中継に掲載された梅田望夫氏の観戦記によると、渡辺は53手目の▲2三角打を過大に評価していた節がある。つまり、この手で自分の方が優勢になったと思った。ところが羽生は、「(角と金桂の)2枚がえになって飛車がなれればふつうはいいのにね」(図2)という感想戦での米長邦雄会長の問いかけに、「ふつうはそうですけどね…」と言葉を濁したらしい(以上、梅田望夫氏の観戦記より)。

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この局面、どうしても私には先手有利に見えるのだが、ただその有利の内実は、渡辺が思っていたほどに大きなものではなく、だからそのことに気づいていた羽生は言葉を濁し、後手有利だといった発言もしなかったのだろう。言い換えるなら、羽生は渡辺の“楽観”に気づいていて、それを逆手に取った。

素人の浅知恵ではあるが、先手は9八香~9九玉の構想に少々無理があり、その2手のために後れを取ってしまったのではないだろうか。結局は穴熊に組み上げることができず、その囲みの不備を突かれる恰好で負けたことを考えると、この2手はやらずもがなだったような気がする。

ところで渡辺も、解説の佐藤康光棋王も取り上げたのが、上図から△6七歩成▲同金直△6九角打と進んだ下図の局面である。

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この局面に関して、佐藤は「(6七歩を)成って角(6九角打)で勝負になるという感覚を持っている人は少ないだろう」と羽生の大局観の非凡さを示唆し、渡辺は「6七歩を成って角(6九角打)から徹底的に受けにまわられて全然ダメだなんて、考えもしなかった」と感想を述べている(以上、梅田望夫氏の観戦記より)。この局面こそ、未完の穴熊の欠陥を突かれた形である。

ただし、ネット観戦をしていたとき私は、この段階では形勢はまだまだ互角だろうと思っていたし、ネット中継のコメントもはっきりどちらが良いといったものはなかった。ところがここから4手後、羽生に△6四角打という手が飛び出す。これが渡辺を動揺させた。「角打たれて(△6四角)、何かあるだろうと思ったのに……。打たれてみて読んでみて、何もないんじゃひどいですね。打たれて困っているようじゃダメですね」(感想戦での渡辺の言葉、梅田望夫氏の観戦記より)。

私はこの発言は重大だと思う。強豪同士が初めて大舞台で対戦すると、読みがかみ合わないということがしばしばある。ただ、その場合双方が相手の読み筋に気づかないのであって、今回もし渡辺の方だけが羽生の読み筋に気づかなかったのであれば、勝負が一方的になるおそれもある。

もう一つ気になったのが“負け方”である。下図は先手が7八にいた金で6七にあった後手の銀を取ったところである。この局面、“次の一手”として出題されたら、1、2級以上であればほぼ間違いなく正解できるだろう。形作りだったのだろうが、だとしたら“攻め”の手を選んでほしかったという思いがある。

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明日帰国する竜王がブログでどのようにこの一局を総括するか注目されるところである。

第2局は08年10月30、31日に北海道洞爺湖温泉で開催される。

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