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2008年10月24日 (金)

「何も足さない。何も引かない。」プレゼント

Yamazaki12y_2今は仕事の都合で別に暮らしている息子から、誕生日プレゼントが届いた。

包みを開けたら、中には“サントリー山崎”が入っていた。

私が関わっている翻訳の世界で、この“山崎”のキャッチコピーである「何も足さない。何も引かない。」というフレーズが、的確な翻訳のための指針の一つになっていることを息子が知っていて、長年翻訳に携わり、初心を忘れかけた父親に一種の戒めとして贈ってくれた…ということではないだろう。

直ぐに酔っ払ってしまうくせにビールやウィスキー、ワインが好きで、時々この“山崎”を飲んでいたのを思い出してプレゼントしてくれたに違いない。

“山崎”はサントリーが1984年に発売した「シングルモルトウィスキー」。それまでサントリーが作っていたのは、何種類かの原酒を混ぜ合わせて作る「ブレンドウィスキー」が主流だった。が、当時の社長であった故佐治敬三氏が「これからはプレミアムモルトウィスキーの時代が来る」として開発を指示。10年近くの準備期間を経て発売に至ったものである。

おそらく、数ある広告コピーの中でも多くの人に知られているという点で、また商品の特性を見事に表現している点からも、「何も足さない。何も引かない。」は名コピーの一つだろう。

この広告コピーが登場したのは1989年のこと。一時期、これを書いたのは、かつてサントリー(当時は壽屋)に勤め、数多くの印象的コピー(たとえば、「人間らしくやりたいな/トリスを飲んで人間らしくやりたいな」)を残した作家開高健(かいこう・たけし)だという説があったようだが、それは間違い。コピーライターの西村佳也氏が作者である。

「何も足さない。何も引かない。」というフレーズが新聞や雑誌、テレビで使われるようになった1989年に開高健が亡くなったことから、「遺作」といった尾ひれもついて、「開高作品」という噂が流布したのだろう。

当初、“山崎”は12年物しかなく、そのためラベルに“AGED 12 YEARS”の文字はなかった。それが1992年に“山崎18年”が発売され、“AGED XX YEARS”の表記が使われるようになる。その後、95年には“山崎10年”が発売され、現在では“山崎シェリーウッド1986”と“山崎25年”を加え、5種類の“山崎”がある。また、期間限定で“山崎35年”と“山崎50年”というプレミアムウィスキーが発売されたことがあった。このうち、“山崎50年”は日本製として初の“100万円ウィスキー”だった。

さて今夜は“山崎”を飲みながら、“何も足さない、何も引かない”が果たして本当に翻訳の要諦なのかを考えてみることにしよう。

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