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2008年11月20日 (木)

動機の説得力

一昨日(08年11月18日)午前、旧厚生省で事務次官を務めた人がその夫人と共に刺殺され、同日午後には別の旧厚生事務次官経験者の夫人が同じように刃物で刺され重傷を負った。

警察の発表は「同一犯の犯行か」と慎重を期した表現になっているが、これは「同一犯」ないし「同一グループに属する犯人」による犯行と見ていいだろう。

新聞やテレビの報道では、折からの世界的金融不安と昭和初期の金融恐慌という類似性から、血盟団などの連続テロを思わせる事態だと危惧する意見が多い。また、この2つの事件が同一犯ないし同一グループの犯行であった場合、それは決して許すことのできない「凶行」であるという点でも共通している。

まだ犯人も捕まっておらず、真相はまったく分からない。が、これが単独犯、それも政治的意図などとは無縁の市井の人間による犯行で、たとえば制度の不備のせいで年金がもらえず、それがために家族の中に犠牲になった者がいたなどという状況だったとしたら…。

無論、殺人を正当化するつもりは毛頭ない。犯人は糾弾されるべきである。だがその一方で、年金にまつわる官僚の無責任、怠慢、利己主義には多くの日本国民が憤りを感じているという事実がある。

高級官僚の天下りは絶えず、特殊法人の理事職などを渡り歩いて手にする高額の退職金という、我々庶民には考えられないような“甘い汁”を吸っている。それに対し、自分たちは本来受け取れるはずだった月々数万円の年金さえ、官僚たちのせいで受け取れないかもしれない―こうした単純化された図式を目の前に突きつけられれば、高級官僚経験者が襲われたことに拍手喝采はしないまでも、心の底で受け入れてしまう人間は少なくないのではないか。

怖いのは、そうした“犯罪の動機が説得力を持つ事態”である。政治の目的の一つは、どんな犯罪であれ、それが正当化されるような環境の成立を阻止することにあるはずだ。こと「年金問題」について言えば、大半の国民に関係し、影響が深刻化する可能性があり、その原因がシステムの不備と同時に、それを運営してきた官僚の側にあることが明らかであるということで、それに対する“義憤による犯罪”を容認ないし黙認する風潮が生まれないとも限らない。

“義憤”の問題は、その立脚点となる“正義”というものが本質的に恣意性を抱えている点にある。因って、政(まつりごと)とは本来、民の大半が納得する正義を貫くことであるはずで、その場合の“正義”はまさに「国民の目線」による検証を受けなければならない。

今回の犯人が捕まり、その動機が明らかになったとする。その時、「高卒、50歳の主婦」が「あんたの言ってることは分からないじゃないけど、だからって人を殺めちゃいけないよ。あんまり頼りにはならないかも知れないけど、政府だって国会だってありゃ(年金問題は)大きな過ちだって認めてどうにか是正しようとしてるんだから」と犯人を諌める側に立つような国であるべきで、それはマスメディアが声高に「許しがたい凶行」だと言い募るよりも、よっぽど健全な国であると言えるだろう。

さらなる被害者や模倣犯の発生を未然に防ぐため、警察には犯人の早急な逮捕を希望する。

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