« 第68期将棋順位戦参加全棋士一覧 | トップページ | 将棋:第67期名人戦七番勝負第2局1日目 »

2009年4月20日 (月)

“マグロ名人戦後援取り止め”に関する私見

今将棋ファンの間で話題になっている問題がある。

三浦半島の突端、神奈川県三浦市に三崎というマグロの水揚げで知られる港がある。その「三崎のマグロ」を賞品にした「三浦三崎マグロ争奪将棋大会」(俗に「マグロ名人戦」)と呼ばれるアマチュアの将棋大会が毎年、地元の有志を中心に開催され、今年で33回目を迎えようとしている

昨年日本将棋連盟がその「マグロ名人戦」の後援を中止した。その経緯を、三浦三崎マグロ争奪将棋大会実行委員会の関係者が自身のブログで取り上げた(将棋工房「御蔵」のブログ)。

このブログ・エントリーや将棋関連の掲示板にブログ主が書き込んだ内容によれば、30年以上前から「実行委員会」が手弁当で開催していた「マグロ名人戦」に、将棋連盟は6年前から「後援」の形で関与していた。しかし、その内実は大会運営に大して寄与するものではなく名前貸しのようなものであった。

マグロ名人戦の実行委員会委員長と大会審判長という主催者側の中心人物2名が高齢のため引退を考え始めたところ、折りよくLPSA(日本女子プロ将棋協会)が設立されたので、協力を依頼したところ快諾を得ることができ、「協賛」の形で2年前(第31回大会)から女流棋士の派遣などの協力を得られるようになった。

そのようにして第31回大会(2007年12月)は、「LPSA協賛、日本将棋連盟後援」の形で開催されたが、第32回大会(2008年12月)の後援を将棋連盟に依頼したところ、「他団体が運営に関わるのであるならば連盟は後援を再考する」旨の文書が連盟普及推進部 ・普及開発課の名で実行委員会宛てに送られてきたという。さらにその文書に対する実行委員会の返事に対して、「連盟理事」立会いの下、「連盟に反する団体と協賛するならば除名する」との通告を口頭で受けたという。また将棋連盟からの文書にはマグロ名人戦を将棋連盟との「共催」とすることを求めるともとれる文言があったという。

第32回大会終了後も除名の話は消えず、それならと日本将棋連盟三浦支部(=マグロ名人戦実行委員会)は自主的に解散したとのことである。

これに対して、日本将棋連盟は09年4月17日に「三崎支部について」と題するコメントを「日本将棋連盟普及部」の名で、連盟のウェブサイトに掲載した。なお、そのコメントは現在では「三浦支部について」となっており、「三崎」→「三浦」の変更については後述する。

その将棋連盟のコメントを読むと、「女流棋士会が分裂後、この大会はLPSAが協賛となり永く協力してきた日本将棋連盟に対しては『後援』、LPSAは協賛という扱いでした」と事実を記した上で、将棋連盟三浦支部が「LPSAに協力している方と、意見の違う支部会員の方が新しく立ち上げた横須賀支部とに分かれ」たと説明している。

そして「(日本将棋連盟)普及部は神奈川県支部連合会と横須賀支部に対して全面協力と信頼関係を密にして普及に努めております」と態度を表明し、「正しい事実をご説明させていただ」いたと結んでいる。

しかしこの将棋連盟の文は、「マグロ名人戦の後援を降りた理由」、「除名」の警告を与えた事実については一切触れていない。また、『将棋工房「御蔵」のブログ』にある「連盟に反する団体」がLPSAであるとするなら(そうとしか読めないが)、日本将棋連盟がLPSAを、自分たちに「反する団体」であるとする理由を説明する必要があるだろう。

LPSAというのは、日本将棋連盟に属していた女流棋士10数名が将棋連盟を自主的に退会して立ち上げた組織である。その設立の経緯についてはいろいろと問題が生じ、現在も将棋連盟とLPSAの間にはそのことをめぐる感情的軋轢があると聞いている。

またこれも風聞ではあるが、マグロ名人戦に対するLPSAの「協賛」はほとんど無償に近いもので、マグロ名人戦実行委員会には経済的負担がかかっていないようだ。それは将棋連盟のこれまでの「後援」についても言えることで、ほとんど手作りに近い大会の主催者にとっては、LPSAであれ、将棋連盟であれ、経済的負担がかからないこと、いわばボランティア的に関与してくれる組織であることが重要だった。

客観的に見ると、実行委員会側にもミスがあったと言えるだろう。実情は「実行委員会=三浦支部」であったにしても、大会要領などの公式発表では「実行委員会」を名乗っていたのだから、“実行委員会と三浦支部は別組織である”との主張を前面に押し出し、将棋連盟と交渉するという方途もあっただろう。

また、LPSAへ協力を要請するに当たっては、その理由を将棋連盟に対して明らかにし、“LPSAさんは無償で所属の女流棋士を大会に派遣してくれるそうですが、連盟さんの方は如何ですか”と条件提示で正面突破を図る手もあったはずだ。それでも“LPSAが関係するなら、うちは手を引く”と将棋連盟が言うのであれば、それは諦めるしかないが、支部の除名云々という問題は起こらなかっただろう。

一方、将棋連盟の方は実行委員会(=三浦支部)とは比べようもない大きなミスを犯したといえる。

これまでのネット上の情報から判断する限りにおいては、将棋連盟がマグロ名人戦の後援を降りたのは“LPSAという将棋連盟に反する団体が関係しているからだ”という理由しか考えられない。将棋連盟が“営利組織”や“ヤ印系組織”、“町の商店”であるならいざ知らず、公益社団法人として“将棋の普及”をその事業目的として謳っている以上は、アマチュアの将棋大会に、たとえ自分たちの意に沿わない組織が関係していようと、協力するのが当然ではないだろうか。

これまであまり重視していなかった「マグロ名人戦」という、一アマチュア大会にLPSAが協賛者としてかかわるようになり、LPSAへの敵対心から、後援では納得できない共催にせよ、と迫ったというのが分かりやすい図式であり、「三浦支部」が正式名であるのに、『将棋工房「御蔵」のブログ』が「三崎支部」と誤記していたのを鵜呑みにして、最初の発表文では「三崎支部について」とタイトルからして間違ってしまったのが、将棋連盟のこれまでのマグロ名人戦に対する関心の度合いを示す証左だろう。

今回の問題や未だに進展のない“青葉記者排除問題”などを併せて考えてみると、日本将棋連盟はいわば至上命題と位置付けていた“公益社団法人格の取得”を諦めてしまったのだろうかとさえ思えてくる。

|

« 第68期将棋順位戦参加全棋士一覧 | トップページ | 将棋:第67期名人戦七番勝負第2局1日目 »

将棋」カテゴリの記事

コメント

この問題について、2ちゃんねるでいくつか発言した者ですが、あそこはまあ御承知の通り、過激な発言が入り乱れるので、このように中立かつ客観的な記事に出会うとほっとします。
この記事が大勢の人に読まれるといいですね。

投稿: miro | 2009年4月20日 (月) 23時04分

miroさん

コメントをいただきありがとうございます。1日出かけていたため、返事が遅くなりました。

今回のマグロ名人戦にかかわる問題では、まがりなりにも双方から情報が開示されたので、私のような部外者でも多少意見を述べたり、是非の判断をすることができました。しかし、青葉記者の問題や、さらにさかのぼって女流棋士の分裂問題などは、あまりに情報量が少なく、判断のしようもない状態が続いており、一将棋ファンとしてはもっと情報を開示するよう将棋連盟をはじめ、将棋関係者の方々に要望するところです。

投稿: Jack | 2009年4月21日 (火) 21時09分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/44731166

この記事へのトラックバック一覧です: “マグロ名人戦後援取り止め”に関する私見:

« 第68期将棋順位戦参加全棋士一覧 | トップページ | 将棋:第67期名人戦七番勝負第2局1日目 »