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2009年5月12日 (火)

大阪3美術館訪問その2

和泉市立久保惣記念美術館の見学を終えて外に出た。天気はいわゆる「ピーカン」という、雲ひとつない晴れで、日差しが厳しい。

タクシーで最寄駅まで戻ろうとしたが、タクシーが見当たらない。しかたなく、バス停留所に行き時刻表を確認すると、15分ほどで次のバスが来る予定になっている。その間にタクシーが通ったら拾おうと思ったが、結局1台も通らず。そのおかげで本当に久しぶりに路線バスに乗った。

泉北高速鉄道和泉中央駅からは幸いにも、南海電鉄高野線相互乗り入れで難波まで直通の電車に乗ることができた。電車の路線や相互乗り入れなどというのはよそ者には皆目分からない。が、こうした偶然もまた楽しいものである(偶然といえば、久保惣美術館の入館料が市民フェスティバルとかの期間中で200円だったのも得した気分がしたものだ)。

Photo南海電鉄難波駅で降り、簡単に昼食を取る(大阪は「食いだおれ」と言われるほど美味しいものがあるが、今回は食事については二の次とした。最優先は3美術館を訪ねること)。次の目的地大阪市立東洋陶磁美術館は、難波からは2駅目の地下鉄御堂筋線淀屋橋駅下車。 

 

Photo_2ここではボランティアガイドによるツアーがあるというのでそれに参加した。ツアーの対象となるのは平常展の日中韓の作品群。その「東洋陶磁美術館」という名が示すように、ここの収蔵品は粒ぞろいである。多くの優れた作品を見たのだが、その中からいくつかを取り上げる。

まずは今回見た中でもっとも気に入った作品の一つ『青磁象嵌菊牡丹文鶴首瓶』。残念ながら写真では再現されていないが、象嵌部分はもっと鮮やかな色調で、全体も少し青がかった色合いである。資料では高さ33.3cmとなっているが、その存在感は強烈で時間があればしばらく眺めていたかった。 

 

 
Photo_3次はこの美術館の人気ナンバーワンの女性、『加彩婦女俑』。ふっくらとした線で構成される顔や髪型、立ち姿は奇跡のような絶妙のバランスを生み出している。

この作品は回転する台に載せて展示されており、ゆっくりと数分かけて1回転するため後姿も見ることができる。こちらを向いた時に仔細に見ると、アジア的な小作りな目鼻立ちで、やさしさに満ちていながらも凛とした表情が美しい。これも時間があればじっくりと話をするように見ていたい作品である。 

 

 

Photo_5そして今回の旅のもう一つの目的であった『国宝飛青磁花生』。

こちらの作品は、東洋陶磁美術館が誇る「自然採光展示ケース」に収められていた。展示ケースの天井を透明な樹脂板で覆い、自然光を取り入れるという、「青磁本来の色」を見せる工夫である。

さすが国宝の指定を受けているだけあり、色、形、艶など、すべてに非の打ちどころがない。ランダムに付けられているように見えるアクセントの鉄班は、作品を真上から見ると、直線上にきれいに並んでいて、その位置には細心の注意が払われていることが分かるという。

ところで“青磁の色”は、「晴れた秋の日の午前10時に、北向きの部屋で障子1枚を隔てて差す陽光」で見るのが“本道”とのことである。そんな条件でこの花生をもう一度見てみたいものである。

この日の午前、久保惣記念美術館で『国宝青磁鳳凰耳花生』を見たが、実はこの大阪東洋陶磁美術館にも同じ「青磁鳳凰耳花生」という名の作品がある。

Photo_6それが左の作品で、器形や大きさ、色など、久保惣の『万声』とほぼ同じ。青磁鳳凰耳花生にはもう一つ『千声』という銘の品が陽明文庫にあり、そちらは重要文化財に指定されているとのことである。

『千声』はまだ見ていないが、『万声』と大阪の花生を比較した場合、一方は国宝指定を受け、片方は何の指定も受けていないという片方は重要文化財であるが、その違い、理由がよく分からない。素人目で気づいた範囲で言えば、『万声』の方が耳の鳳凰の細工が鮮明で細やかかなというぐらいだが、『万声』には釉薬がかかりきらず、生地が露呈しているのだろうか、一方の耳に褐色に見える箇所がある。一度専門家に、国宝指定の基準などを尋ねてみたい。【修正:大阪市立東洋陶磁美術館の『青磁鳳凰耳花生』は重要文化財でした。上記のように修正します。】

Photo_7さて、東洋陶磁美術館で2時間近くすごしたためと、閉館時間を勘違いしていたために、最後の目的地である藤田美術館に着いたときには既に入館時間を過ぎていた。それでもダメもとの気持ちで、蔵を改造した展示館に入って行くと、係りの方が「4時半までですが、よろしかったらどうぞお入りください」と快く受け入れてくれた。

この藤田美術館は春と秋の年2回、それぞれ3ヶ月ほどの季節展を開催するだけで、あとは閉じているという至って優雅な展示方法を取っている美術館で、開館期間を確認しないで行くと無駄足になることも少なくない。

今回は野々村仁清の作品がまとめて展示されているのと、何と言っても『国宝曜変天目茶碗』の展示予定を確かめたくて訪れた。

光悦、長次郎、ノンコウなどの楽茶碗、「色絵輪宝羯磨文香炉」をはじめとする仁清の作品、そのほかに尾形乾山の作品もあり、わずか20分の滞在だったが充実した陳列を堪能することができた。

次にここを訪れるのは、「曜変天目茶碗」が展示される予定の来年の春季展だろうか。

2藤田美術館を出た後は、京橋というところから京阪電鉄で京都に行き、イノダコーヒ本店でコーヒーを飲み、京都駅から新幹線で帰ってきた。

金曜日の午後10時に家を出て、帰宅したのが土曜日の午後11時。25時間のあわただしくも楽しい旅だった。

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コメント

駆け足旅行なのに、ちゃんと京都まで行って珈琲飲んでくるなんて。すっごく充実した25時間ですね。

投稿: pompon | 2009年5月13日 (水) 13時13分

>京都まで行って珈琲飲んでくるなんて・・・

今回の目的の一つがこれだったんです。以前のエントリーにも書いた通り、おそらく28年ぶりの再訪。でもお店は変わっていませんでした。味も当然昔のまま。京都にはこういう「いつまでも変わらない」部分があって、旅行者でもほっとすることができるんですよね。

投稿: Jack | 2009年5月13日 (水) 21時25分

時間的には駆け足でも、充実した良い時間をお過ごしになれたようで何よりです。

私も 20 年近く前、夜行バスで京都まで行って、平等院の藤を見て鴨川べりで食事して、その日の夕方には帰ってくるという強行軍をやったことがありますが、時間をうまく使えばそれなりに楽しめるものだと実感しました。

投稿: baldhatter | 2009年5月17日 (日) 18時37分

>夜行バスで京都まで行って

友人が若い頃、遠距離恋愛のはしりで、2、3ヶ月に一度くらい(だったと思います)、東名高速バスで京都との間を往復していました。それがちょっぴりうらやましくて、今回はバスを選択したようなものです。スキーやスケートで夜行バスに乗ったことはあるのですが、これだけの長距離をバスで移動したのは初めてでした。途中で

Pass me a cigarette - I think there's one in my raincoat.
We smoked the last one an hour ago.
So I looked at the scenery, she read her magazine,
And the moon rose over an open field.

って、頭の中で歌ってました^^

投稿: Jack | 2009年5月18日 (月) 10時19分

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