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2009年5月28日 (木)

展覧会:板谷波山をめぐる近代陶磁

4『板谷波山をめぐる近代陶磁展』(泉屋博古館分館)を観てきた。

板谷波山(いたや・はざん)といえば「葆光彩磁」(ほこうさいじ)と呼ばれる、器の表面にうっすらと淡雪が降り積もったような独特の色合いを見せる釉が有名だ。この展覧会では、その波山の葆光彩磁の中でも最高傑作の呼び声が高い「葆光彩磁珍果文花瓶」(ほこうさいじちんかもんかびん)が出展されている。

1高さ51cm×胴径39.8cm×口径27.7cm×底径21cmと、大人でも抱えるのに苦労しそうな大きな作品で、胴の周囲に「桃」、「びわ」、「葡萄」という果物(「珍果」の意)の図柄を配し、その間に「鯉」、「羊」、「孔雀」の絵をあしらっている。全体を「青海波」が埋めている。使われている字は「福」と「寿」で、この作品はその全身が「祝」を表している。

写真で見ると大きさを感じさせないことから分かるように全体のバランスが絶妙で、しかも鬱陶しさを感じさせるような重厚さもない。見ていて心地よくなってくるような「温かさ」、「柔和」を感じさせる。

「葆光彩磁」というのは色に濁りがあると薄汚れた印象が何倍にも増幅されてしまうだろうと思うのだが、当然この作品の色はピュアであり、気品あふれる表情がある。

ところで「花瓶」なので、当然花を生けることを想定しているが、この花瓶にはどんな花も負けてしまうような気がするのだが、假屋崎省吾あたりに生けさせたら面白い作品が出来上がるかも知れないなどと夢想してしまう。

2さて個人的に気に入った作品としては「氷華磁仙桃文花瓶」(ひょうかじせんとうもんかびん)。こちらは高さ43.3×胴径39.6×口径20×底径20cmと「珍果文花瓶」よりも少々小ぶりながら、存在感は負けず劣らずのものがある。また大きな作品だが愚鈍さがない。肩や文様にわずかに溜まった釉の青が味わい深い。

この展覧会ではもう1人、やはり人気の高い作家が大きく取り上げられていた。その作家とは初代宮川香山(1842-1916年)。高浮彫りで知られた香山だが、今回高浮彫りは一点も出品されておらず、主に香山晩年の作品が中心でないかと思われる。

色絵付けや青磁、仁清や乾山の写し、染付など、香山が如何に才能豊かな陶芸作家であったかが一目で分かる多彩な作品が取り上げられていた。

3その中で一つ、香山の“彫刻家”的技能の高さが発揮された置物を紹介しよう。「白磁老子置物」という作品で、焼き物なのに象牙か大理石の彫刻のような切れのよさがある。ただし、その艶を見ると、やっぱり焼き物なんだということが分かる。

展覧会というのは、メインの展示物は当然見る価値があるのだが、こういう“脇役”のような作品に魅力的なものを見つけるというのも楽しみの一つである。

『板谷波山をめぐる近代陶磁』展は09年6月14日まで、東京港区の泉屋博古館分館で開催中。

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