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2009年6月 2日 (火)

将棋:第67期名人戦七番勝負第5局 1日目

寝坊をした。なのでNHK BSの放送は見ていない(録画予約もしていなかったorz)。

そこで大急ぎでネット中継で指し手の確認。なんだこりゃ、第3局とおんなじだ。

プロの将棋は、特に羽生善治が登場してからは、将棋に関する考え方に変化が生じ、序盤が重視されるようになった。序盤の作戦勝ち(模様良し)のアドバンテージを仕掛け以降の中盤で拡大し、それを終盤に結びつけて勝つ――これが今のプロ将棋のいわば“メインストリーム”である。

“羽生世代”と今は呼ばれる棋士たちが“チャイルドブランド”として恐れられた10代から20代前半にかけ、谷川浩司をはじめとするその前の世代は、羽生らの将棋の“辛さ”に戸惑い、戸惑っている内に次々と討ち取られていった。才能では中原誠や米長邦雄をも上回ると言われた故芹沢博文は、そうした羽生たちの将棋を手厳しく批判した。だが、羽生たちは勝ち続けた。

いつしか羽生たちの将棋観が将棋界の中心に位置し、それまでの“棋道精神”とでも呼ぶべき典雅な趣き(悪く言えば古色蒼然とした将棋観)は次第に姿を消し、かつては「筋悪」、「外道」と言われた戦い方さえもが採用されて行った。

今や持ち時間各自30時間で1週間をかけて指し継いだ時代とはまったく別の将棋観、将棋界がある。そこまで溯らなくても、大山・升田が争った時代や中原・米長の時代と比しても、明らかに隔世の感がある。

それは“勝つことを至上命題とする”将棋にとっての必然であり、進化であると思う。それまでの常識にとらわれることなく、“勝つ”ためにはどうするべきかを虚心坦懐に、冷静に追究した結果として獲得した新たな戦略――“羽生世代”がもたらしたのは将棋におけるパラダイムシフトであり、それゆえに前の世代も後の世代もその牙城を崩せずにいる。

とはいえ、羽生世代もいずれは敗れるときがくる。ただそれは次世代によるパラダイムシフトによってではなく、羽生世代の“衰え”によるところが大きいだろう。では次のパラダイムシフトはいつか? それは予想できない。今既に現役である世代によってはもたらされない可能性もある。また、羽生世代が引き起こしたものとはまったく異質の変化になることも考えられる。パラダイムシフトには「予想不能」という側面が本質的に含まれている。そこから発想すると、後世、羽生世代は“将棋の戦い方に変革をもたらした最後の世代”と呼ばれる可能性さえ否定できない。

さて、その羽生世代の雄、羽生善治と郷田真隆の名人戦である。

第3局同様、横歩取りの戦いになった。18手目△2二銀の局面は(手順は異なるものの)第3局とまったく同じである。

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ここから第3局は▲8七歩△8五飛と、後手が8五飛戦法を採ったが、本局では郷田が変化して▲5八玉、後手羽生は△8四飛とし、下図の局面で昼食休憩となった。

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局面は進み、△4四角打と2六の先手飛車に当てて打ち、▲2四飛と逃げ、△3三桂とあがったところで、先手が5五に角を打った(下図)。

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双方一歩も引かない激しいなぐり合い。だが、この▲5五角打は強烈だった。羽生の手が止まる。羽生に誤算があったか。ここから△2三銀▲4四角△2四銀▲5三角成△2七飛と進んだ33手目、郷田が1時間25分の長考で指したのが▲2三歩打(下図)。

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素人目にもこの手は良さそうに見える。何といっても取ることができないというのが後手にしてみると腹立たしい。検討陣からはこの一手で「名人は痺れたか」の声もあがった。果たして羽生が長考に沈む。午後4時45分から考え始め、午後6時半を迎えて羽生の封じ手番が決定。しかし午後7時を過ぎても、まだ羽生は封じていない。

午後7時26分、2時間42分の大長考の末、羽生が34手目を封じた。

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