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2009年7月25日 (土)

『蟹』との再会

先日東京国立博物館に行った際、久しぶりに初代宮川香山の『褐釉蟹貼付台付鉢』を見た。

2ご存知の方も多いと思うが、初代宮川香山は京都の出身。陶磁器製作のため請われて横浜に移り、明治の初めに現在の横浜市南区に「真葛窯」を創設した(参考)。

香山の作った陶磁器は「真葛焼き」と呼ばれ、初期の作品はこの『蟹』に代表されるような立体的造形の「高浮彫り」が中心だった。一説によると、香山は当初、鹿児島の「薩摩焼き」を手本として作陶に取り組んだものの、横浜には良質の土がないことと(最終的には伊豆半島の土を使ったといわれる)、薩摩焼きでは金をふんだんに使っており材料費がかさむことなどから、それに代わるものとして高浮彫りの技法に行き着いたという。

もともと、造形技術・センスに非凡なものを持っていた香山の作品は、特に海外で高く評価された。

焼き物には表面に「釉薬」(ゆうやく、うわぐすり)をかけて焼き、ガラス質のコーティングを施したものと、釉薬を使わない無釉のものとがある。家庭で使うお茶碗は一般に釉薬を使っている。表面がつるつるとしているかどうかで、釉の使用の有無を知ることができる。釉を使う目的は焼き物の強度を高めること、表面がガラス質で覆われるため清潔に保てること、色艶が良くなる装飾的効果などがある。

香山の『蟹』は台の一部が、釉がかかっていない素焼きの状態になっているほか、蟹の部分も無釉のように思える。施釉焼成後に彩色する「上絵付け」の技法を使ったのだろう。

1代わりに器の内部にはかなり深いところまで釉が及んでいる。ただし、台の中も空洞になっていて、確認できなかったがその内部には釉が届いていないようだ。

一般に真葛焼きの高浮彫りは実用には不向きであり、この『蟹』も実用よりは装飾・観賞用として作られたものだろう。ただ、他の高浮き彫りの多くがややもすると技巧が勝ちすぎているのに対し、この『蟹』はテクニックをひけらかすことに終始することなく、見る人を驚かせるほどのリアリティと、蟹と器というとり合せの妙が見事にバランスしている。

香山は生涯に、これと類似した作品を合計4つ作ったと言われている。折があれば、他の3作品も見てみたいものである。

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