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2009年7月 8日 (水)

羽生の言葉:名人戦を終えてのインタビュー

09年7月8日付朝日新聞夕刊に、先ごろ将棋の名人位を防衛した羽生善治名人のインタビュー記事が掲載された。

羽生といえばその的確な物言いで、将棋棋士の中では抜きん出た表現者として知られている。だが近年、その羽生の言葉が以前に比べ難解になってきたという印象を受けていた。それは羽生が置かれた状況の反映でもあるのだろう。1996年25歳で将棋界の公式タイトル7つをすべて獲得した時までは、若さも勢いもあり、おそらくは自分の将棋を徹底すれば自ずと勝利を得ることができたのだろう。しかし頂点を極めた後というのはどんな人間にとってもモチベーションの維持という難題に直面することになる。

その辺りを故大山康晴十五世名人は、「タイトルを獲ることは難しく、それを守ることはさらに難しい。しかし本当に難しいのは失ったタイトルを再度獲得することだ」といった言葉で表現した。達成感とは、モチベーションの喪失と裏腹の関係にある。

モチベーションの低下は羽生といえども効しがたく、96年の7冠獲得を一つの頂点とし、その後一つ、二つとタイトルを失い一時は1冠にまで後退した時期もあった。私の印象ではその頃から羽生の言葉に難解な表現が含まれるようになったような気がする。昨年、森内俊之九段を降して永世名人の称号を得た後のインタビューでの言葉も羽生にしては明快さに欠けるという印象だった。

それが、少なくとも今回のインタビューではそうした分かり難さが払拭されている。

【今期七番勝負を振り返って】
「名人戦は対局時間が長いし、期間も長いので、テンションを最初から最後までキープして行くのが大きなポイントだと思っていました。…(中略)とりあえず気持ちだけは切れずに最終局までたどり着けた。そういう姿勢を来年以降もできたらと思います」

【対戦相手郷田真隆九段について】
「定跡を鵜呑みにするんじゃなくて、自力で考えて、道を切開いて行くというか、そういう面が非常に強いと改めて思いました」

【名人戦での防衛について】
「前の防衛は13年前ですか。…(中略)自分でも安定感がないと思っています」

【タイトルホルダーが4人いる現状について】
「拮抗した状態はしばらく続くと思います。30代が多いですが、ただ10年後にみんな同じ位置にいるのかと言えば難しい気がします」

【40代に向けての課題】
「将棋が古臭くならないことでしょうか。…(中略)自分のスタイルを時代の変化に合わせて常に変えていかなきゃいけないと思っています」

【名人戦終局後の会見での「渋みや粘り強さを伸ばしたい」について】
「今の将棋って技をかけにいっても簡単にはかからない。定跡化して、結論が出て、勝負がつくというような明快な図式ではなくなっている。そういう時に違うアプローチや臨機応変にちょっと引いてみるとか、どうまとめ上げるかが大事」

再び明快な言葉を取り戻したかに見える羽生は明日(09年7月9日)、第80期棋聖戦五番勝負第4局を迎える。相手は3歳年下の木村一基八段。現在1勝2敗、負ければ棋聖位を失うことになる。

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