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2009年8月20日 (木)

「飽きる」ということ

人は飽きるものである。どんなに楽しいことも、如何においしいものも、どれほど美しいものでも、ある時がくれば飽きる。「ある時」は数分後に訪れるかもしれないし、数十年後かも知れない。ときには、飽きる瞬間がその人の寿命よりほんの少し先に訪れることになっていて、結果的にその人が飽きることなく生涯を終えるということもあるかもしれないが、人の寿命がじゅうぶんに長ければ、ありとあらゆることに人は飽きるものだと思う。

飽きるのは人間の知性・感性の限界であり、また特質でもある。人は飽きることで新たな地平に向う意欲を得る。飽きることで、新たなものを造り出そうとする。飽きることで、新たなものを獲得しようとする。

人が皆、飽きることがなかったら、おそらくこの世界はもっと退屈な場所になってしまうだろうし、誰もそれを疎ましく感じなくなる。停滞が常態となり、どろりとした空気の中で倦むことなく同じことを続ける人たち。犬や猫のように退屈を知らない一生―いや、これは不正確だ。犬や猫も退屈は感じる。ただ犬や猫は退屈を苦痛としない。倦むことのない人々の世界は天変地異以外に大きな事件は起こらず、誰も退屈を厭わなくなる。

飽きるまでの時間には長短があるが、それは「飽和点」のようなものがあるからだろう。対象を受け入れるのに用意された許容量とも言えるだろうか。それは対象と受け入れる人間との相対的関係(相性と言ってもよいか)によって決まる。

名画を前にしても5分で飽きてしまう人もいれば、日がな一日眺めていても、飽きることのない人もいる。また対象によっては、飽きる飽きないが知識・情報の多寡に左右されるものもある。

知識や情報が豊富であるほど、飽きるまでの時間は長くなる。特定分野の専門家が一生をその分野に費やしても倦むことがないのは、背景に豊富な知識・情報があるからだ。また飽きることがないのは、そこに「変化」があるからでもある。それは対象の変化であったり、人間側の変化であったり、双方の変化であったりする。とにかく変わることで、対象と人との関係も変わり、飽和点への到達を先送りにする。

飽和点への到達が人生の終焉よりも先であることを祈る時、人の寿命は人の知性・感性につり合った長さなのではないかと思う。

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コメント

現代語の「あきる」では、どうしてもネガティブな意味になります(どちらかというと、「厭きる、倦きる」ですねる)。もともとの「飽く」で考えたいところかもしれません。

「飽く」の共通イメージは、何かしら容量制限のある「いれもの」が一杯になる感じでしょうか。

だから、一杯になることを肯定的にとらえれば、「堪能する、十分満足する」の意味にもなるし、逆にいっぱいいっぱいになっちゃって余地の残っていない状態だと「うんざり」にもなる。一杯にすることがそもそもの目的だったときには充足感につながるけれど、そこで終わっちゃうこともあるかもしれない。一杯になったらその次、と考えられれば進歩が生まれる。

「退屈」とは似て非なるところも含めて、いろいろと面白いテーマです。。

投稿: baldhatter | 2009年8月22日 (土) 14時42分

「飽きる」ということの内実・本質についてはまだよく分かりません。今のところ、「飽きる」ということは(ちょっとカッコいい言葉を使うと)知能にとってアプリオリなものだろうと考えています。もちろん知能がじゅうぶんに高度であれば、飽きるということも事実上なくなるのでしょう。おそらく「神」は飽きることがないと思います。逆に知能が低下しても飽きることがなくなるのだと思います。人間ぐらいの中途半端な知能がいちばん飽きっぽいのかも知れません。

投稿: Jack | 2009年8月23日 (日) 17時44分

> 「神」は飽きることがないと思います

神様にとって、「飽きる」ことと「退屈する」ことの違いがあるのかどうか判りませんが、リチャード・バックの『イリュージョン』は、「退屈している救世主」の話でした。

投稿: baldhatter | 2009年8月24日 (月) 13時28分

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