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2010年2月25日 (木)

スポーツ後進国 【追記あり】

一昨日の新聞に、スピードスケートの清水宏保選手の『スポーツ後進国日本』というコラムが掲載された。お隣韓国との対比で、スポーツに充てる予算の規模や使い方の違いから、韓国をスポーツ先進国、日本を後進国として論を展開している。

だが彼の論を追っていくと、金をかければ即スポーツ先進国なのかという疑問がわいてくる。韓国の事情には詳しくないし、第一、「スポーツ先進国」とは何かがよく分からないところがあって焦点のずれた話になるかもしれないが、国内の至る所にスポーツを楽しめる施設・設備があって、誰もが手軽に気軽にスポーツを楽しめ、なおかつその延長で世界レベルのエリート選手が生れてきて、国などによる十分な支援の下、五輪等の国際大会に参加することができるというのがスポーツ先進国ではないだろうか。そうだとするなら、日本も韓国も実情は五十歩百歩ではないだろうかという気がする。

ただ、「五輪の期間中、国中が注目しメダルの数を要求される」という部分については、清水選手の言い分に耳を傾けざるを得ない。確かにこの国はメダルに対する欲求が強い。強すぎる。本来、メダルを取りたいと一番強く思っているのは選手本人である。それが、マスメディアの取り上げ方は、少しでも可能性があろうものなら即座に“メダル候補”に仕立て上げ、「メダル何個だあ!」とヒステリックに騒ぎ立て、本人以上にメダルへの希求を煽り立てる。

さらに、

「バンクーバー五輪では、JOCの役員、メンバーが大挙して現地入りしている。予算は限られている。そのため、選手を手塩にかけて育てたコーチや、トレーナーがはじき出され、選手に快適な環境を提供できていない。お金の使い方が逆だろう」

という清水選手の発言は重大だ。そこで今回のバンクーバー五輪日本選手団の構成を調べてみた(参照)。

【2010年バンクーバー五輪選手団】

競技名
選手
チームリーダー
監督・コーチ
メディカルスタッフ等
合計
1.スキー
24
16
40
36 76
アルペン
(2)
-
(2)
(6) (8)
クロスカントリー
(2)
(4)
(6)
(5) (11)
ジャンプ
(5)
-
(5)
(4) (9)
ノルディック複合
(5)
-
(5)
(4) (9)
フリースタイル
(5)
(5)
(10)
(9) (19)
スノーボード
(5)
(7)
(12)
(8) (20)
2.スケート 17 18 35 40 75
スピードスケート (10) (9) (19) (17) (36)
フィギュアスケート (4) (4) (8) (16) (24)
ショートトラック (3) (5) (8) (7) (15)
3.バイアスロン 1 1 2 2 4
4.ボブスレー・リュージュ 7 4 11 8 19
ボブスレー (4) (2) (6) (3) (9)
リュージュ (1) (1) (2) (2) (4)
スケルトン (2) (1) (3) (3) (6)
5.カーリング 0 5 5 4 9
6.本部 - - - 21 21
合計 49 44 93 111 204

目立つのはアルペンスキーの選手2名に対して監督・コーチ・トレーナーが6名であることと、フィギュアスケートの選手8名に対して監督・コーチ・トレーナー・総務が16名いることだが、それ以外は概ね選手とスタッフ等との人数はバランスが取れているように見える。比較のため前回トリノ五輪の選手団構成を以下に示す。

【2006年トリノ五輪選手団】

競技名
選手
チームリーダー
監督・コーチ
メディカルスタッフ等
合計
1.スキー
30
20
50
52 102
アルペン
(5)
(3)
(8)
(11) (19)
クロスカントリー
(4)
(5)
(9)
(9) (18)
ジャンプ
(6)
-
(6)
(8) (14)
ノルディック複合
(5)
-
(5)
(6) (11)
フリースタイル
(4)
(5)
(9)
(8) (17)
スノーボード
(6)
(7)
(13)
(10) (23)
2.スケート 16 19 35 37 72
スピードスケート (9) (10) (19) (16) (35)
フィギュアスケート (2) (4) (6) (13) (19)
ショートトラック (5) (5) (10) (8) (18)
3.バイアスロン 5 5 10 6 16
4.ボブスレー・リュージュ 8 4 12 5 17
ボブスレー (2) (2) (4) (1) (5)
リュージュ (4) (1) (5) (2) (7)
スケルトン (2) (1) (3) (2) (5)
5.カーリング 0 5 5 3 8
6.本部 - - - 23 23
合計 59 53 112 126 238

いずれの場合も「本部」の20数名というのが気になるところで、果たしてこれほどの人数が必要なのか―清水選手が指摘したのもこの本部のことなのかもしれない。ここが半分になれば、コーチやトレーナーの数をそれだけ増やすことができる。それでも20人程度のことで、「大挙して」というのは少々大げさに聞えなくもない。或いは、上記リストとは別の“裏リスト”があって、現地には上記リストに載っていない面々が大勢出かけて行っているということなのだろうか。その辺のことを、ブログでいいからもう少し詳しく説明してほしいものである。

清水選手の主張については、上述したように全面的に賛成するわけではないが、第一線の選手からこういう意見が表明されるということはこれまであまりなかったことで、その意味では「後進国」という指摘は当たっている。文科省やJOCをはじめ、日本のスポーツ政策を担当する組織・団体の関係者には、ぜひとも刮目して読んでもらいたい。

【追記】2010.2.26
バンクーバー五輪では、上記選手団以外にもマスメディアやスポンサー、さらには用具・ウェアのメーカーのサポートチームなどの関係者が大勢現地入りしている。その中に「ジャパンハウス」というJOCが運営する、五輪関係者を対象としたホスピタリティー施設がある。或いは、こうした「付帯事業」にかこつけて、不必要に多くの「JOC関係者」が現地に「大挙して」押しかけているのかもしれない。

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