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2010年4月 7日 (水)

将棋、人間vsコンピュータ

4月2日に、スパコンvs女流棋士の公式対局が発表された。

情報処理学会からの挑戦を受ける形で日本将棋連盟は所属の清水市代女流王位・女流王将が今秋、コンピュータとの正式対局を行うことを発表した。

しかしである。2007年、渡辺明竜王が対戦した将棋ソフト・ボナンザが搭載されていたマシンはIntelのサーバーワークステーション用CPUを使っていて、その性能は約154ギガFLOPSだった。それに対して(発表通りならば)今回使用されるのは日本最速スーパーコンピュータである東大のT2K。計算能力は120テラFLOPS前後と言われている。これだけで計算能力の差は780倍。さらに同じ仕様の京大と筑波大のスパコンも並列して使う計画だという。

仮にソフトウェアが3年前のものと同じ性能であったとしても、ハードウェアが数百から2000倍以上の高性能であるのだから、単純に考えても将棋で言えば角ないし飛車1枚ほどの差があるのではないだろうか。

2007年の対戦では、渡辺竜王が予断を持って対局に臨み、それが裏目に出て、一時期は劣勢に立たされたものの最後は地力を発揮して将棋ソフトに勝ったのだが、今回対戦する清水女流は渡辺竜王とは角1枚以上の力量差があると思われる。前回より実力が確実に上がっている相手に、前回の対局者よりも大きく力の劣ることが分かっている者をぶつけるというのは間違いだろう。

ここで簡単に将棋の実力を説明すると、

【1】男性プロ将棋棋士
【2】プロ棋士予備軍(奨励会という育成組織に所属。一部には既にプロ並みと言われる者もいる。大半が男性)
【3】アマチュアトップ棋士(一部はプロ棋士に近い実力あり。全国で40人前後。全員が男性)
【4】女流プロ棋士

というのが大まかな順番である。当然、それぞれの境界は明確に分かれているわけではない。

で、コンピュータ将棋ソフトとの対戦成績ということで言えば、最近ではアマチュアトップ棋士がやや負け越している。それもスパコンではなく、高性能ワークステーション程度のマシンを使った相手にである。

また男性プロ棋士は所属する日本将棋連盟の方針により、無許可でコンピュータと公に対戦することができないことになっており、3年前のボナンザvs渡辺戦以来、対局は行われていない。

情報処理学会にすれば、スパコン予算が民主党の事業仕分けの対象となり、今後も予算取りで厳しい展開が予想されることから、ここらで話題作りをし、世間の注目を集め、予算交渉での材料にでもしようという目論みがあるのだろう。

しかし、日本将棋連盟にとって、この対戦は果たしてどんな意味があるのか。将棋のことを知らない人にすれば、「女流といえどプロなんだから勝って当然、負けるのはおかしい」と考えるのではないだろうか。とすれば勝っても負けても、連盟が得るものはほとんどないのではないか。

しかも「今回コンピュータが勝利を収めたとして、半年から1年ごとにプロ四段からトッププロ、最終的には名人か竜王と対戦を致します」(情報処理学会の発表)とのこと。これでは、今なら勝てるかもしれない(絶対勝てるとは言い切れない)若手のプロ四段でも、「ムーアの法則」下にあるコンピュータの進歩によって、半年後に対戦するときには勝てなくなっている可能性がある。以下、順次対戦する棋士のランクを上げていくようだが、それでは結果的に人間側の全敗ということもあり得る。

将棋は偶然が入り込む余地のない「完全情報確定ゲーム」であり、そのため、いつかは人間がコンピュータに勝てなくなる時がくる。だが、今ならまだ人間=プロ棋士の方が強いはずだ。ならば、戦力は集中せよの定跡通り、ここは勝てる可能性のある棋士をぶつけるべきだろう。

もちろん、清水女流が絶対に勝てないのかと言われれば、勝つ可能性はある(それが将棋の怖さである)。清水女流が勝った場合は自分の不明を詫びるしかない。

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