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2010年5月 7日 (金)

将棋:第68期名人戦七番勝負第3局 羽生3連勝

千葉県野田市で昨日(2010年5月6日)から行われていた将棋名人戦第3局羽生善治名人対三浦弘行八段戦は、今日午後9時30分、132手で羽生名人が勝ち、名人位防衛にあと1勝となった。

戦型は三度(みたび)「横歩取り」になった。ただし、横歩取りを選択したのは羽生の方だった。先手三浦の初手は▲7六歩だったので、これに羽生が△8四歩と応じていれば、まず横歩取りにはならなかっただろう。

以前にも書いたが、横歩取りというのは最初の20手ぐらいまでに一歩間違えれば奈落の底に突き落とされるような激しい変化が随所にあり、素人には難解というか、危険すぎて手を出し難い戦法である。

ところが今、プロの間ではその横歩取りがちょっとしたブームになっている。今期の名人戦も全部横歩取りということも十分あり得る展開になってきた。

さて第3局だが、局後の感想で羽生も三浦もずっと自分の方が苦しいと思って指していたと述べていた。高段者の将棋であれば双方ともに楽観せず、いわば“悲観しつつ”将棋を指し続けることは当然であり、ことに羽生は最後の最後まで楽観することがないので知られている。

ただ羽生の場合は、将棋は苦しいのが当然だと達観していて、その苦しさを楽しんでいる風があるのに対し、三浦はそこまでの心境には達しておらず、苦しさを真っ向から受け止めてしまっているように見える。

タイトル戦での経験の差だと言えばそうなのだろうが、中継サイト(有料のため閲覧には登録が必要)に掲載された終局後の写真を見ても、明らかに三浦の消耗の方が激しい。そこには彼の生真面目な性格も関係しているのだろう。

三浦が羽生のような“余裕”を持てるようになったあかつきには、さらに一段、階(きざはし)を上ることになるだろう。

さて今回注目したのは、最終盤での羽生の寄せ手順。

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上図は111手目、三浦が▲1五角と王手に打ったところ。控室では△3三銀打で受かっているのではと言われていたが、羽生は銀ではなく△3三角と合い駒をした。それに対し▲5一飛成(下図)。

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正直言って、この手を見た時は「あ、やられた!」と思った。後手同玉に先手は3三角成と迫り、合駒(おそらく香だろう)には▲同角と取って、△同玉に▲5四桂と打てば決まっていたのではないだろうか。また合駒をせずに△6一玉と逃げれば▲8三角打で、後手にとって大事な攻めの拠点である6五の桂を抜かれてしまう。或いは▲4三馬とすり寄ってもやはり6五の桂を取ることができる。

実際には、三浦は後者の手順を選び下図となった。

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大事なはずの6五の桂を取られてしまったのである。これでは攻め手がない→戦意喪失→ほどなく投了、というのが我々の将棋なのだが、やはりプロは着眼が違う。羽生の次の一手(下図)は、解説なしに見ていた者として心底しびれた。

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この銀は取ると先手の負けとなる。つまり、▲同玉△4九飛打▲5九合△6八銀打▲同金△7九飛打▲同玉△5九飛成▲6九合△8八金までである。

因って三浦は▲5七玉と逃げたが、羽生の寄せは厳しく、上図から10手後、後手の3三銀打(下図)を見て三浦が投了した。

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後手玉はまだ詰まず、先手玉は一手一手の局面 ― なので先手投了となったわけだが、この将棋、そんな単純ではなかったようで、局後の感想戦で、投了図から▲8一金△7二玉▲8二金打に、(1)△6二玉▲6一桂成△同玉▲7一金寄△5一玉▲7三角が王手龍取り。または(2)△7三玉▲5一角(王手銀取り)△7四玉▲3三角成△7八銀不成▲6六銀△同龍▲同歩△7五玉、などの変化が発見され、双方1分将棋では勝負がどう転んだかはわからない。この発見に、三浦も相当落胆していたようだ。だが、疲労困憊した三浦にはその順を見出す力が残っていなかったということなのだろう。

これで後がなくなった三浦だが、2日制対局でのスタミナ配分に工夫が必要だろう。

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