« 月と金星 | トップページ | 将棋:第68期名人戦七番勝負第4局 羽生4連勝で防衛 »

2010年5月18日 (火)

大丈夫か、プロ将棋

Photo_3

まずは左の文章を読んでいただきたい(オリジナルはこちら)。

ほとんどの方が何のことやらチンプンカンプン、ただ尋常でない文章という印象だけが残るのではないだろうか。

以前、このブログでも取り上げたように(参照)、プロの将棋界には2つの団体が存在する。日本将棋連盟(米長邦雄会長)と日本女子プロ将棋協会(中井広恵代表)であり、前者(以下、連盟)は男性棋士を中心とした組織で30数名の女性棋士も所属しているが、彼女たちは男性棋士のような「正会員」としての処遇は受けていない。一方後者は(以下、LPSA)、2006年に連盟を離れ独立した女性棋士10数名が立ち上げた女性棋士だけの組織である。

その規模(年間予算額や所属棋士数など)の差は数十倍もあろうか、もちろん連盟の方がはるかに大きい。

さて冒頭に挙げた文はその連盟が発表したもので、日レス・インビテーションカップ(日レスは棋戦スポンサーである日本レストランシステム株式会社 [大林豁史代表取締役会長] の略称)という、LPSAが主催する女子プロ将棋の大会に、連盟所属の女性棋士3名を招待したいという招請を断った経緯を説明した、将棋ファンへの説明である。

将棋の総本山を標榜する組織の公式文としてはきわめて奇妙な表現が並んでいる。

まあ、出だしの一文は目をつぶるとしても、その次の、

弊社団に属する女流棋士3名は、本人達に全く事前了解も無くインターネット上に名前をさらされました。

であるが、この「3名」とはLPSAが(10年)4月21日に公式サイトで、“日レス・インビテーションカップに特別招待する棋士”として名前を挙げた3棋士のことであるが、プロ棋士がプロ将棋の大会に招待され、それを公表されることが、「名前をさらされ」ることになるのだろうか。

そして、さらに異様なのがその次である。

一人は泣き、一人は理事会に一任し、一人は口頭にて断りました。罪も無い  か弱い女性へのこのような仕打ちは今後は止めて下さいますようお願い申し 上げます。(原文のママ)

泣いたり、理事会に一任したり、口頭で断ったのは、上記の3人の女性棋士のことらしいが、通常このようなことを公式文に書くだろうか。これこそ個人的な事柄を“ネットにさらす行為”ではないだろうか。さらに「か弱い女性」というのは、一人前のプロたる女性棋士の立場を無視し、棋士として認めていないような表現であり、一種の女性蔑視でもあろう。

また、“なぜ”泣いたのか、“何を”理事会に一任したのか、“誰に”口頭で“何を”断ったのかといった肝腎なことが意図的に省略されていて、どのようにでも読めるような表現である。

一方のLPSAにも、女性棋士3人への招待状送付から、ネットでの公表まで十分な時間を設けたのか、連盟に検討の時間を与えたのか、或いは連盟からの返事を待ってから個人名を公表するという選択肢もあったのではないかという疑念は残る。

実は連盟とLPSAは、先の『プロ将棋界の「コップの中の嵐」』でも取り上げたように、連絡協議会を作り、そこで両団体の友好的関係構築に努めていくことで合意していたのだが、今年1月、どうにもよく分からない理由で中断となり、その直後に米長会長が自身のWebサイトで連絡協議会の席で「盗聴・盗撮が行われていた」という旨の発言をして騒ぎたてたことがあった。

米長会長が言う「盗聴・盗撮」とは、会議の際に議事録作成の代わりに録音・録画した行為のことであったようで、その際、録音や録画用の機器はテーブル上に置かれていたとのことで、まったくの言いがかりであったようだ。

以上のことから、賢明な読者諸氏はもうお分かりだろうが、連盟とLPSAの関係はますます悪化しており、やがては連盟側からLPSAに対して交流を一切断るとの“国交断絶”宣言が出る可能性さえ感じられる。

そんなことになればLPSA所属の女性棋士は連盟が主催している伝統的な主要棋戦から締め出されることになり、運営基盤が固まっていないLPSAには致命的な打撃となる。

では何故そこまで事態がこじれ始めたのか ― (いつか、きちんと検証したいと思っているが、今は一言)背後には“カネ”と“感情のもつれ”があるとにらんでいる。

私は将棋が好きだ。これからもプロの将棋を見たいと思っている。だが現状は、私のようなファンが心置きなくプロ将棋を楽しめる環境とはほど遠いものがある。まして、“将棋の総本山”が冒頭のような稚拙で、何の展望もない文を公式サイトに掲載するようでは、プロ将棋の前途は暗澹たるものであると言わざるを得ない。

|

« 月と金星 | トップページ | 将棋:第68期名人戦七番勝負第4局 羽生4連勝で防衛 »

将棋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/48395800

この記事へのトラックバック一覧です: 大丈夫か、プロ将棋:

« 月と金星 | トップページ | 将棋:第68期名人戦七番勝負第4局 羽生4連勝で防衛 »