« 『禁じられた遊び:愛のロマンス』誕生の秘密 | トップページ | 国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」 »

2010年7月18日 (日)

Tシャツ

先日、デザインが気に入ったTシャツを見つけた。手に取り、サイズを確かめた上で、もう一度書かれている英語の文言を確かめた。

やっぱり変なのである、その英語が。

メモしておかなかったので、うろ覚えなのだが、「It is just truth of saying today's hapiness proudly」とかいう文だったと思う。スペルもおかしいが、なにより文意がつかめない。

実は10数年前、主夫役も担うようになってから、子どもたちの服を買いに行って驚いたのが、小さな子ども用のTシャツに上記のような怪しげな英語が書かれた品が多いことである。「Collection」とするべきところを「Correction」としているのなど愛嬌がある方で、いわゆる「4レターワード」を堂々とプリントしてあるものもあった。

なまじ英語を知っているだけに、どうしてもそうした品物を買う気になれず、そのため ― 既に中学生だった長女は別として ― 我が家の長男と次女は小さい頃、英文がプリントされたTシャツというものを着たことがない。私が買わなかったからだ。

今では2人とも大きくなり、自分の意志と好みで衣服を選び購入しているので、私の出番もなくなった。だが私自身が着るシャツとなると、未だに英語もどきがプリントされたものは買う気になれない。今の仕事を続けている限りはそれも当然だろうと思う。いや、そう思っていた、昨日までは。

とある店でのこと。私は以前から探していたアディダスのハンティング帽がその店にあることを知り、それを買うために出かけて行った。その店で、20代と思しき白人の男性を見かけた。身長は私より少し高いぐらいで、決して大男ではない。顔立ちも整っていてハンサムであり、身なりもなかなかのオシャレである。

その彼がセール対象品のTシャツを何枚か選び、慎重に吟味している。おそらく、彼なら日本のLサイズでちょうどいいだろう。時期が時期だけに、1,000円以下の品でも良いものがある。だけどちょっと待てよ。そこに置いてあるTシャツはほとんどが英語もどきのプリントじゃないのか。

しかしその彼はTシャツを2枚ほど選び出すと、それを持ってレジに向かって行った。

彼が選んだTシャツは予想通り、英語もどきのプリント柄だった。彼は英語を知らないのだろうか。それは分からない。だが英語を知っていたとしたら、当然Tシャツに書かれているのがデタラメな文であることは一目瞭然だろう。それを敢えて買うというのは…。

なるほどと思った。あれがもし日本語だったら、(たとえば)本来「剣豪」と書かれているべきところが「剣蒙」となっていたら…私だったら面白がって買うかもしれない。本来はフロントにあるべきロゴが、なぜか後ろに刺しゅうされていたサッカーパンツをわざわざ選び、製造ミスで底部にメーカーのロゴがプリントされていないコーヒーマグを喜んで買ったりする人間である。まず買うだろう。

そうだとすると、私が英語もどきプリント柄のTシャツを買おうとしなかったのは、「英語の翻訳をしてるくせに、あんなデタラメな英語が書かれてるシャツを着てる」と思われるのがいやだという、己の英語力に対する「見た目に基づいた他人の評価」を意識していたからだろうか。それは過剰な自意識であり或いは己の英語力に対する自信のなさ故かもしれない。なぜなら、ネイティブスピーカーであれば明らかな間違いなど、かえって楽しむはずだから。

白人の青年がデタラメ英語のTシャツを購入する様子を見て、そこまで考えた。だけど、その店にあったTシャツを、やはり買う気にはなれなかった。多少とも英語が分かり、英語を生業としている身として、デタラメ英語の蔓延には加担するまいという思いがあったからで、そうしたTシャツ類を10年以上にわたり1枚も買わなかったのは、実はその思いが理由であったことに気づいたからだ。

ここ数年、私にとって幸いなことは、アメリカあたりのメーカーのライセンス品が比較的安価で手に入るようになってきたことで、さすがにそうしたライセンス生産品に怪しげな英語が使われていることはほとんどない。

|

« 『禁じられた遊び:愛のロマンス』誕生の秘密 | トップページ | 国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」 »

身辺雑記」カテゴリの記事

コメント

 Jackさんも書かれてますが、白人=英語が理解できるとは限りませんね。英語圏以外のくにでは、第二外国語の選択肢として英語が圧倒的に多いですが、「選択肢」であって「強制」ではなく、学校で習っても、得意な人、そうでない人がいるのは、日本でも他の国でも同じみたいです。現在の仕事場でも英語圏以外の人の英語を読むことが多いので、こういうことを言いたいのかしらと、資料をみながら半分想像で日本語にしています。書き手も問い合わせられる時は、そうしますが。
 ところで、こちらでは漢字ブームです。この間、ある店の前に飾られたTシャツを思わず写真にとりました。胸のところに3行で、
日本人
彼 女
募集中
とありました。二行目の「彼女」の間に、赤○(たぶん日の丸を意味している)が入っています。
間違いではありませんが、日本では着れないだろうなぁと思いました。

投稿: pompon | 2010年7月19日 (月) 06時09分

>こちらでは漢字ブームです。

タトゥーはどうですか。もう5、6年前になるでしょうか、アメリカ西海岸辺りだったかで、
漢字のタトゥーが流行り、まあ注文する方も、される方も漢字は知らないというケースが
少なくないのでしょう。相当に「やばい」表現がぶっとい二の腕やたくましい大胸筋を
飾っていたという話を聞いたことがあります。
どんなふうに「やばい」か ― 胸に書かれた文字が「台所」とか^^

投稿: Jack | 2010年7月20日 (火) 22時01分

フェイスブックでも占いのような感じで、誕生日などから「あなたにぴったりの漢字」が出てくるアプリがあるくらいですから、タトゥーでも漢字は流行っていると思うのですが、どうもタトゥーからは私自身が引いてしまうもので、あまり詳しくありません。寝具屋さんのショーウインドーに、一時期、漢字がプリントしてある布団カバーをかけて飾ってありましたが、上下が反対だったもので、いつも落ち着かない気持ちでみてました。

投稿: pompon | 2010年7月22日 (木) 20時46分

>上下が反対だった

まさに、彼らにとっては「It's Chinese to me.」なんでしょうね。
今日私が見たのは、ポロシャツの胸に付けられたエンブレム。
チーム名らしきアルファベット文字の下に「強」の一文字が。
正しく書かれていて、ちょっと残念でした^^

投稿: Jack | 2010年7月23日 (金) 01時44分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/48911859

この記事へのトラックバック一覧です: Tシャツ:

« 『禁じられた遊び:愛のロマンス』誕生の秘密 | トップページ | 国宝「大井戸茶碗 銘喜左衛門」 »