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2010年9月28日 (火)

検察官証拠改竄事件雑感

尖閣諸島の問題に目を向けていたため、これまで取り上げることができなかったが、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改竄も深刻な事件である。

ただし、未だ全容の解明には至っておらず、またマスメディアも連日大きく取り上げ、その明示的、暗示的含意についてもかなり取り上げられているので、ここではまったく違う角度から感想を述べてみたい。

そもそも障害者団体向け郵便料金割引制度を悪用したあの事件では、主犯格とされた厚生労働省の元局長の無罪が確定し、本人は既に復職した。そこで不思議なのが、単独犯とされる元係長の動機である。

賄賂の授受といった事実も今のところは確認されていないようなので、なぜ元係長が障害者団体でない組織に割引制度を受けられるような便宜を図ったのかはっきりと解明されていない。

同様に、大阪地検特捜部の担当主任検事がフロッピーディスクに保存されたデータを改ざんしたというのも、その動機というか理由が明確に見えてこない。真相はこれからの捜査を待つしかないのだが、この事件を聞いて一つ思い出したことがある。

それは2000年に発覚した、古代遺跡の発掘調査で次々と大きな発見をし、周囲から「ゴッドハンド(神の手)」と持て囃された人物のことである。以前からあまりに易々と重要な遺物を発見するその人物に、周囲も多少の疑念を感じていたようだが、結局長年にわたって放置されるところとなってしまった。

今回事件を起こした検事も「大阪地検特捜部のエース」と呼ばれていたようで、事案によっては東京まで応援に来ていたという。それほど実力を買われていたわけだが、結果的に、検察官として決してやってはいけないことをしでかしてしまった。

片や「ゴッドハンド」と称賛され、片や「エース」と評価される。周囲の期待というプレッシャーは相当なものであったろうし、おそらくは本人の中に一度手にした「名声」を失いたくないという気持ちが動いたのだろう。

それもまた人間の弱さなのだが、そこに自分が行おうとしていることがもたらす影響の甚大さに気付く想像力を欠いていたという悲劇も重なる。無論、その所業が惹起する被害の深刻さを思えば弁護することもできないし、そんな気はさらさらないのだが、前代未聞の不祥事をしでかそうという時、そこで踏みとどまり、自分の行為の帰結を正しく見通す、強さと賢明さを兼ね備えている人はそうざらにはいないだろうというのも否定できないところである。

罪は罪として厳正に処断すべきなのは当然だが、そうした弱さが根本にあるとしたら、それはそれで悲惨な事態ではある。

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