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2010年12月 1日 (水)

残念なコンサート:フジ子・ヘミング

昨日(2010年11月30日)、友人に誘われてフジ子・ヘミングのコンサートに行ってきた。クラシックのコンサートなど、20数年ぶりのこと。しかも会場はその20数年前のコンサートと同じ東京文化会館だった。

クラシック音楽に関してはまったく無知無粋な人間なので、フジ子・ヘミングの名前は知っていたがその演奏は、ライブはもちろん、CD、テレビ、ラジオのいずれでも聴いたことがなく、今回は敢えてその「まっさらな状態」のままで聴いてみようと決意。一切の予習をしなかった。

Photoプログラムはショパン、ラベル、ドビュッシー、バッハ、リストと、幸い私でも名前を知っている作曲家たちの作品で構成されていた(写真参照)。とはいっても作品レベルになると、「知っている」、「聴いたことがある」と言えるのはわずかに3曲。あとは、聞いてはじめて「あ、聞いたことがある」という作品が2、3。なんとも心許ない観客である。

途中20分間の休憩をはさんで前後半で合計1時間40分に及ぶ演奏をすべて暗譜で通したのには驚いた。クラシックのピアノソロでは普通のことなのだろうか。このあたりの事情も門外漢には分からないところである。

演奏中気になったのは、「ミス」と思える箇所が少なからずあったこと。ジャズのライブでは「ミス」は付きモノなので、それに慣れている身としては眉をひそめるようなものではないが、クラシックを知らない人間が分かったぐらいだから、クラシック好きな人であったら、もっとたくさんの「ミス」に気付いていたのかもしれない。

フジ子・ヘミングの演奏を聴いていて、ふと思い出したのがグレン・グールドのことだった。でもその理由が分からない。分からないまま、最後の「ラ・カンパネラ」を聴いているときに、「かなり変わった演奏なのではないか」と感じ、グールドを想起した理由はそのフジ子・ヘミングの「風変わりなところ」ではないかと考えた。

では、フジ子・ヘミングのどこが「風変わり」なのか……分からないまま帰ってきた。今朝気になって仕方がなく、YouTubeでユンディ・リの「ラ・カンパネラ」を聴いて、「あれ、めちゃくちゃ速くないか」― 直ぐに同じYouTubeでフジ子・ヘミングの演奏を探し出し比べてみたら、ユンディ・リの演奏時間は約4分30秒で、フジ子・ヘミングの方は約5分50秒。その差は1分20秒である。なるほど、この遅さが「風変わり」の原因だったのだ。

作曲者の意図とはまったく違ったテンポで演奏したグールドを思い浮かべるなんて、俺の耳も捨てたもんじゃないなと一瞬悦に入ったりもしたが、客観的に考えれば、CDを持っているクラシックのピアニストはグールドだけなので、クラシックのピアノコンサートでグールドを思い出したのはそちらの事情の方が与って大きかったはずだ。

フジ子・ヘミングの「遅さ」はかなり有名なようで、今回YouTubeなどを調べている内に、こんなブログを発見した。「フジコは速く弾かないのではなく、速く弾けないのだ」ということのようだ。なるほど、「専門的観点」からはそう評価されるのかもしれないが、フジ子・ヘミングの演奏(解釈)、私は嫌いではない。

ただもう一度コンサートに行くかと問われれば、「行きません」と言わざるを得ない。たぶん、今回誘ってくれた友人も、私の反応からそのあたりのことは察してくれただろうと思う。単純に言って、ジャズの素晴らしいコンサートなどのようには感動することができないのだ。

それともう一つ理由が……。

フジ子・ヘミングには2歳年下のがいる。その彼がコンサート終了後にステージに登場 し― マイクを使わなかったので2階席の私たちには何を言っているのかはっきりとは分からなかったが ― 大声で観客席に向かって何やら話を始めた。その後、フジコが挨拶のため使用したマイクを借りて、「大日如来が……」、「曼荼羅が云々」といったことを興奮した口調で話し出した。

クラシックに限ることではないだろうが、コンサートの後というのは余韻を楽しむひと時である。緞帳がある舞台ならその緞帳をながめ、なければステージ上に残された楽器などをながめ、その直前まで目の前のステージで繰り広げられていた演奏の熱気を思い起こし、今一度味わう。そこまでを含めたものがコンサートである。

それなのに、山高帽にモーニングコートという些か奇抜な服装は措くとしても、演奏終了直後のステージにしゃしゃり出てきてのあの行動はそうした余韻を台無しにしてしまった。まるで、絵画に赤いペンキをぶっかけるような行為である。

それともああした弟の行動は今回に限ったことではなく、フジ子・へミング本人もファンもそれを赦しているのだろうか。であるなら、私ごときがとやかく言っても無駄であり、ご自由におやりくださいと言うほかない。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

こんにちはm(__)m
クラシックで本当に驚愕と感動を得たかったら作曲家佐村河内守の交響曲第一番“HIROSHIMA”をオススメいたします。

全聾の天才作曲家と呼ばれる人で、現代音楽作曲家が束になっても書けない大作(80分)をとてつもない完成度で書き上げる方です。

YouTubeをみて仰天してしまいました!

フジ子さんや、辻井君の障害⇔才能など桁がちがいます。

投稿: 靖之 | 2011年2月19日 (土) 12時41分

靖之さん

情報ありがとうございました。
この人のことはまったく知りませんで、実は名前も読めませんでした。最初は
「さむらかわちのかみ?」とトンチンカンな読み方をしてしまいました。Wikipedia
でも取り上げられているほどの人だったのですね。折を見て、作品をじっくりと
聴いてみようと思います。

投稿: Jack | 2011年2月20日 (日) 00時31分

感性のない人ですね。
音楽はその人の個性が出て様々ですし
その人の想いや人生が音楽となって味が出て
それがまた面白かったりするものです。
その日のコンディションもあると思いますが、
巨匠と呼ばれた人の晩年の演奏を鑑賞しに行ったこともありますが
年齢とともにやはりミスがあったりや迫力もありませんでしたが
音楽が自分の年齢とともに衰えるのを見るのも
一生を音楽にかけるような気がしてとても素敵でした。
このような多数の人に影響を与えるようなコメントは
よいのでしょうか?
私はこちらのブログのコメントが残念でした。

投稿: | 2011年5月 7日 (土) 18時59分

上記の匿名さんのコメントに関しては、別にエントリー(タイトル「悪口コメント」)を
書きましたので、そちらをお読みいただくとして、この人は、私が書いていない
ことをあたかも私の主張のように書いているのでその点だけ指摘しておきま
す。
よく読めば分かるように、私はフジ子・ヘミングの技量についてはコメントして
いません。ミスが目立ったというのは事実の記述です。それでも、どちらかと
言えば、ああいう解釈・演奏もいいのではないかという容認派でしょう。ただし、
大きな感動は得られなかったのも事実です。
人が言ってもないことを、あたかもその人の主張のように言いかえるのを「藁
人形論法」といいますが、この無名氏もその姑息である意味卑怯な手段を弄
しています。なんでもっと正々堂々と「フジ子・ヘミング擁護論」ないし「礼賛」を
書かないのでしょうかね。

投稿: Jack | 2011年5月16日 (月) 20時41分

  私は、先日(6月18日土曜日)広島での初のリサイタルに行ったのですが、感動しました。

展覧会の絵の、迫力に圧倒されました。ラ・カンパネラは、繊細で華やかで力強かったです、

ネットでお安くCDが、買えないかなと検索していて、

ヘタクソだの、残念なコンサートだの書いてあるのを見て、吃驚しました。

そういう考えもあるのかと思って・・・・・

でも、もしご本人が 見られたら、いやだと思います。

私もご多聞に漏れず、子供のころピアノをしていて 小6で止めました。

人に聞かせる腕も無いけど 羨ましいなと思いました。そりゃあ努力もしとってだろうし、運もあろうし、やっぱり素晴らしいことだと思います。

投稿: たかこちゃん | 2011年6月20日 (月) 15時24分

たかこちゃん

感動できるアーティストを見つけられたようで良かったですね。
世の中に音楽家は数多いますが、なかなか自分の琴線に
ふれる人というのにめぐり合うことができません。その意味で
あなたはとっても幸せなんだと思いますよ。

>でも、もしご本人が 見られたら、いやだと思います。

そうでしょうか。プロたる者、高いお金を払って、時間を割いて
自分のコンサートに来てくれる客に対しては、最大限の努力
と細心の注意を払って対応するべきだと思います。

今フジ子・ヘミングの音楽については措くとして、コンサートの
マネジメントとして、あのような形で「闖入者」を許すというのは
感心できません。

また一観客として、納得のいくパフォーマンスを音楽家に求める
のは当然の行為でもあります。

これは推測ですが、フジ子・ヘミングのファンは皆さんとっても
やさしいのでしょう。だから彼女のやることは全部肯定し、受け
入れてしまう。それがさらにああした周囲の人間までも増長さ
せている・・・これが邪推であればよいのですが。

投稿: Jack | 2011年6月21日 (火) 16時46分

先日、フジ子ヘミングのピアノコンサートを楽しんで参りました。 感動しました。ただこの一語につきます。人の感性は1十人十色で意見も様々。お金を支払った価値判断も様々。自分が満足出来たらそれで良しですね。

投稿: こっこさん | 2011年8月 5日 (金) 13時04分

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