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2011年1月11日 (火)

ランドセル

昨年のクリスマスの日に、群馬県内の児童養護施設にランドセル10個が届いた。贈り主は「伊達直人」―漫画『タイガーマスク』の主人公で、孤児院で育ち長じてタイガーマスクとして活躍するようになってからも孤児院の子どもたちに贈り物を届けたという設定の人物である。

その「伊達直人」という名と、「ランドセル」という、単なる学校用品を超える意味を持つ品という絶妙な組み合わせであったからだろう、全国でこれを真似る者が現れ、ランドセルや文房具、現金などが児童養護施設等に次々と届くようになった。こうした善意の連鎖というのは良いものである。願わくは、これが一過性で終わることなく、入学を控えた冬のこの時期の風物詩になってくれることを祈ると共に、「過熱して」妙な方向に進むことがないことを願う。

「ランドセル」といえば、山本おさむの短編漫画『ランドセル』を思い出す。小学校入学を目前にした少年が、家が貧しいゆえにランドセルを買ってもらえず、母の知り合いから貰ったのは、元の色も分からない程ボロボロのランドセルだった。だがそのランドセルの前の持ち主は、記録的被害をもたらした伊勢湾台風の犠牲になった少女だったのである。ある晩夢に出てきた少女は、ランドセルを背負って学校に行くことができなかった自分の思いも背負って学校に行ってほしいと少年に訴える。

ランドセルは、子どもが自分の成長を実感し確認する極めて象徴的な品であるといえるだろう。親にしても、決して安くはないランドセルを買い与えることは、責務としてまた愛情の表現として、確かで大きな充足感をもたらしてくれるものだ。上記の短編『ランドセル』はそうした子の想い、親の切なさをふまえた良い作品である。

今回の「タイガーマスク」氏の一件からは、その単なる品物以上の品であるランドセルを選んだというところに、相手のことを心から気遣っての贈り物であることを感じとることができる。

物があふれ、壊れても修理せずに買い替えるのが当たり前になってしまった現在で、物の大切さを知り、教えることは難しい。だがこの4月から、見も知らぬおじさんにもらったランドセルを背負って学校に行くようになる子どもたちはきっと、物の大切さとその背後にある贈り主の温かいやさしさを知るようになるだろう。

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