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2011年6月26日 (日)

とりあえずの結果オーライでしかない「もんじゅ」の事故

東日本大震災や福島第一原発の事故などの陰に隠れてあまり注目されなかったが、一昨日、実は日本は福島第一原発以上の大惨事と背中合わせの状態にあった。

それは福井県にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」で、とある作業が行われたからである。

おそらく高速増殖炉「もんじゅ」の名前はほとんどの方がご存知だろう。ではそれが何かを知っている人はあまり多くはないのではないだろうか。また(2011年)6月23日午後8時50分頃から翌24日午前4時55分まで8時間余りをかけて行われた作業がどれほどの危険を秘めたものだったのかも充分には理解されていなかったと思われる。知るほどに恐ろしいことだったということを以下に簡単に説明しよう。

事故が起きたのは昨年(2010年)だった。1995年に起きたナトリウム漏れ事故を受けて本体などに漏えい対策工事を実施するなど14年以上停止していた「もんじゅ」を再稼働させるための準備作業を行っている最中の2010年8月に、「炉内中継装置」と呼ばれる長さ12メートル、重量3.3トンの金属製装置が炉の中に落下した。その落下した「炉内中継装置」を引き抜いたのが一昨日の作業である。

ではなぜそれが危険なのか。

多くの方が福島第一原発の件で原子炉事故の対応が如何に困難かを知ったことと思う。放射能という目に見えず、それでいて致死性のある障害を相手にする作業は技術的にも困難にならざるを得ない。それでも福島第一原発は軽水炉型という冷却材に水を使っているので、今回のように事故が発生した場合は水を満たすことで対応できる。万一火災が起きても、同様に水をかければよい。

ところが高速増殖炉「もんじゅ」では冷却材に「液化ナトリウム」を使用している。このナトリウムというのは、水と接触すると激しく反応して発火・爆発するという性質を持つ危険で取り扱いが厄介な物質である(実験の様子を映したビデオ。話はかわるが、日本でこんな荒っぽい「実験」を学校でやったら教師の首も飛ぶだろう)。

したがって、炉内に落ちたモノを抜き取る際にも液化ナトリウムが水(水分)や空気と接触することは絶対に許されない。ところが作業は炉内にある物を炉外に引っ張り出すわけで、必然的に炉の内部が外部に露出されることになる。その技術的困難さについては、一部の専門家からは不可能だという意見も出されていたほどだ(参照)。

上記のビデオで使われたナトリウムの量がどれくらいかは定かでないが、せいぜい数グラムから多くて10グラム程度ではないだろうか。一方、「もんじゅ」では約1,700トンのナトリウムが使われているという。その大量のナトリウムが水や空気と接触したら、ビデオに映ったものの1億倍以上という規模で爆発が起こることになる。

しかも高速増殖炉は燃料にプルトニウムを使用している。爆発が一次系と二次系のどちらで起こるかにもよるが、仮に一次系で起こればそれは即ち、福島第一原発の1号機や3号機で起こった建屋の水素爆発をはるかにしのぐ激しい爆発で、地上最悪の毒物ともいわれるプルトニウムがまき散らされることになる。そうなれば被害は福島第一原発の比ではないだろう。一説には、本州の大半が汚染され、人が住めない状態になる可能性もあったという。

これが「大惨事と背中合わせの状態にあった」と言った意味である。

今回の福島第一原発の事故で我々一般人が学んだ最大の教訓の一つが、「どんなに優れた技術でも、運用する人や組織によっては危険なものになる」ということだろう。おそらく経済性を無視すれば、原子力発電を安全に行うことは技術的には可能だろう。だが、我々は経済性が優先されるビジネスにおいては安全さえも無視されることがあるという事実を嫌というほど見せつけられた。

さらに高速増殖炉は軽水炉などと違い、技術的にもまだ確立されていないものであり、アメリカやドイツなどでは技術的困難さから開発が断念された代物である。ところが日本は開発を諦めず、「もんじゅ」にしても、落下物の撤去が完了した今、運転再開を目指しての手順に入ろうとしている。

今回「もんじゅ」の事故とその引き抜き作業のことを知り、自分なりに調べてみて、この「高速増殖炉」なるものが、少なくとも今の設計ではきわめて危険なものではないかという疑念を持つようになった。

下の図をご覧いただきたい。高速増殖炉の仕組みを簡単に示したものだが、注目すべきは「2次ナトリウム系」が「蒸気発生器」の中を通過することで蒸気を発生させ、それでタービンを回して発電するようになっている点である。言い換えれば、(おそらく最大厚さ数mmと思われる)金属壁をはさんで、常に液化ナトリウムと水とが接近した状態が続くのだ。その金属壁に直径1mmにも満たない小さな穴があいただけで、ナトリウムと水が接触し爆発を起こすことを意味する。

Photo

そのような危険性を抱えている技術は安全という観点から言って失格だろう。まして、先ほど指摘したように我々国民は、政府も企業も学者も、その発言は先ず疑いの目で見なければならないということを学んでしまった。彼らが安全だと言う時、実は「危険な部分を除けば安全だ」といった類の詭弁ではないかと疑ってかからねばならない。

今は「実証炉」だから、ある意味採算を度外視した運用が図られているが、商用炉になればまたもや彼らが信奉する「経済性」というドグマが生まれ、その独裁者に屈服した時、厚さ数mmの隔壁に穴があかないという保証は反故になる。

技術としてははるかに安全なはずだった福島第一原発でさえ、その「経済性」のゆえにあの体たらくだ。今回はどうにか。落下した物を引き上げることができたが、このほかにも大小いくつもの事故を起こしている危ない実験はもう止めるべきだ。

なお「もんじゅ」の件については、大手メディアはあまり取り上げておらず、地元の福井新聞が比較的詳しい記事を頻繁に掲載している。関心のある方はご覧になっていただきたい。

福井新聞サイト
http://www.fukuishimbun.co.jp/

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