« サッカーW杯優勝:なでしこジャパン | トップページ | コーヒー温度 2011夏 »

2011年7月19日 (火)

なでしこジャパン優勝:ニューヨーク・タイムズの記事に関連して

今回のFIFA女子W杯決勝戦はアメリカでも大きな関心を集めたようで、アメリカの主要紙がこぞって一面トップで報じたという。

その中で目についたのニューヨークタイムズの見出し:"A Resilient Team Soothes a Nation"

Nyt_4

"Resilient"とは「弾力のある」とか「肌の張りがいい」などのほか、IT分野では「(ネットワークなどが)障害からの回復力がある」という意味で使われることが多い。だがここでは「立ち直りの早い」ということから「へこたれない」といった意味合いで使われているようだ。

日本チームの戦いぶりは「不屈」とも表現できるが、それに当たる英語「Indomitable」は、男子カメルーン代表チームのニックネーム「Indomitable Lions」として、サッカーの世界では知られているので、日本女子のイメージとしてはそぐわないという判断でも働いたのだろうか。

こうして読むと「なるほど」と思うのだが、ここに"Resilient"を使うのはやはり英語を母語とし、言語センスがあってはじめてできることだと思う。

次の"Soothe"も簡潔で的確な言い方で、やはり「ナットク」と言わざるを得ない。「なだめる、落ち着かせる、和らげる」という意味であり、日本語でいえば昨今流行りの「癒す」に当たるだろうか。「へこたれることを知らないチームが国を癒した」というのが直訳だが、新聞の見出しというのは広告のキャッチフレーズや詩などと同様、翻訳するのがきわめて難しい文の一つである。ついでながら、新聞の見出しでは基本的に動詞は現在形を使うことになっている。

記事の本文を読むと、日本チームが非常に粘り強く戦ったことを評価したうえで、東日本大震災のことに触れ、「勝つことで被災した人たちに元気と勇気を与えたい」という日本チームの言葉も紹介している。上記の見出しは、その本文の内容を見事に表現しているといえる。

一般にスポーツ関連記事の見出しや文は、日本語にはない英語独特の発想に基づく表現が多くみられる。この記事にあった表現ではないが、日本対アメリカのワールドカップ決勝戦に関する表現で面白いと思ったのが、"90 minutes proved not enough to find a winner." 日本語なら「90分では決着がつかなかった」とでもするところだが、"90 minutes"と、無生物主語を使っている点、"prove"(「~であることが判明する」)という日本語にはない自動詞の使い方も面白い。

ところで上記記事中、「なでしこジャパン」の名前の由来について触れている部分があるのだが、そこには"With each victory in this World Cup, Japan’s confidence seemed to blossom like the pink flower for which the team is nicknamed."(今回のワールドカップで日本チームは勝ち進むにつれ、チーム名の由来となったピンクの花のようにその自信を開花させて行った)と書かれているだけで説明がない。これは、"Nadeshiko"の名とその由来がニューヨーク・タイムズの読者の間では広く知られていることを示唆しているものと思われる。

NHKの実況を担当した野地アナウンサーも「非常にたくさんの海外メディアの人たちに、なでしこの意味を聞かれた」と言っていたが、今回のワールドカップで「なでしこジャパン」は世界的に認知されたものと思われる。

この際、次の代表チームのユニフォームから胸に付けるであろうワールドカップ制覇を表す星の代わりになでしこの花を一輪あしらったらどうだろうか

Photo

|

« サッカーW杯優勝:なでしこジャパン | トップページ | コーヒー温度 2011夏 »

言葉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/220529/52255541

この記事へのトラックバック一覧です: なでしこジャパン優勝:ニューヨーク・タイムズの記事に関連して:

« サッカーW杯優勝:なでしこジャパン | トップページ | コーヒー温度 2011夏 »